要望書・見解等

2018年度


標題 児童福祉に関する国家資格を創設するという報道についての声明
日付 2018年7月5日
発信者 公益社団法人日本社会福祉士会 会長 西島善久
公益社団法人日本医療社会福祉協会 会長 早坂由美子
公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木一惠
特定非営利活動法人日本ソーシャルワーカー協会 会長 岡本民夫
一般社団法人日本ソーシャルワーク教育学校連盟 会長 白澤政和

 私たちは、社会福祉士、精神保健福祉士などのソーシャルワーク専門職で組織された団体、及び全国のソーシャルワーク教育学校で組織された団体です。

 6月18日の福祉新聞の記事によると、6月13日に開かれた「児童の養護と未来を考える議員連盟」(塩崎恭久会長)の緊急会合において、塩崎会長は「今は、児童の専門でなくても、社会福祉士なら(児童福祉司に)なることができる。児童の問題について専門性のある国家資格をつくった方がいいのではないか」と発言されたとのことです。

 この新たな国家資格の創設について、あらためて私たちの見解を以下に述べます。

 私たちソーシャルワーク専門職団体及びソーシャルワーク教育関係団体は、2015年9月17日に「『児童虐待防止対策のあり方に関する専門委員会報告書』に関する提案及び依頼」を、2015年11月25日に「『新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会報告 骨子案』についての要望」を連名で提出しています。

 この文書のとおり、私たちとしても児童福祉司の専門性の向上が必要であることは認識しています。そのための方法として、ソーシャルワーク専門職である社会福祉士や精神保健福祉士の国家資格を積極的に活用し、これらのソーシャルワーカー資格の所持を児童福祉司の任用要件とすべきであると考えております。

 「子ども虐待対応の手引き」(平成25年8月23日雇児総発0823第1号厚生労働省雇用均等・児童家庭局総務課長通知にて改正)において、児童虐待の要因には、1)保護者側のリスク要因、2)子ども側のリスク要因、3)養育環境のリスク要因、4)その他の要因があると分類しています。複雑で不安定な家庭環境や家族関係、夫婦関係、社会的孤立や経済的な不安、母子の健康保持・増進に努めないことなど家庭における貧困や社会関係の困難や地域生活課題があり、子ども家庭福祉を担う専門職には、これらのリスクの分析をはじめ、子どもや家庭を取り巻く広範囲な課題を分析し、積極的に介入していくことができる専門的な力量が必要です。

 社会福祉士や精神保健福祉士は、このような幅広い問題に対応する知識、技術を持ち、問題解決に向けて介入する専門職です。今求められることは、新たに国家資格を創設することではなく、社会福祉士や精神保健福祉士の効果的・効率的な活用を促進し、専門的知識や技術の向上に必要な研修を充実することであると言えます。

 また、2017年度から「児童福祉司」及び「児童福祉司スーパーバイザー」への研修が義務化されており、まずは、その効果を測定し、評価することが求められます。

 2018年3月に取りまとめられた「ソーシャルワーク専門職である社会福祉士に求められている役割等について」(社会保障審議会福祉部会福祉人材確保専門委員会)では、社会福祉士が担う今後の主な役割として、「『地域共生社会』の実現に向けて、1)複合化・複雑化した課題を受け止める多機関の協働による包括的な相談支援体制や2)地域住民等が主体的に地域課題を把握して解決を試みる体制の構築」を挙げており、そのために今後、養成カリキュラム等の見直しを検討すべき、としています。

 今年3月に目黒区で起きた児童虐待のような、痛ましい事件は後を絶ちません。子どもが虐待により死に至るといった事件を無くすためには時間的な猶予はありません。これから新しい国家資格を創設しその養成等に取り組むよりも、可及的速やかに養成カリキュラムや研修の充実による社会福祉士及び精神保健福祉士の実践能力の向上と、社会福祉士及び精神保健福祉士の活用の促進を図り、さらには、これらのソーシャルワーカーが、専門性を活かしながら積極的に介入することができる環境を整備し、子どもたちが子どもらしく生活する権利を守っていくことが必要であると考えます。


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標題 障害者の監禁事件に対する本協会としての対応について(経過報告)
日付 2018年7月2日
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木一惠
提出先  公益社団法人日本精神保健福祉士協会 構成員の皆さまへ

 大阪府寝屋川市(2017年12月)及び兵庫県三田市(2018年3月)での障害者の監禁事件に関する報道は、現代も「私宅監置」が非合法に残存している事実を私たちに突き付けてきました。亡くなられた女性には哀悼の意を、福祉施設に入所措置された男性には今後の安寧を心よりお祈り申しあげます。

 さて、常任理事会では2つの事件報道を踏まえ、本協会としての対応について協議してきましたので、その経緯と現状をご報告します。2件とも親が監禁・保護責任者遺棄致死や虐待の疑いで逮捕拘留中であることや、三田市では第三者委員会による検証中であることも含め、事件自体の発生経緯等の精査を目的とするものではありません。被疑者である親への批判や擁護、または行政対応等に対する批判の言説を発する前に、私たち精神保健福祉士はこうした事態の発生を予防し、支援するために何を成すべきか考えたいと思います。

 「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築」を掲げるまでもなく、精神障害のある人も含めて社会には多様な人が当たり前に存在し、その個性や嗜好が尊重される風土文化を醸成することが必要です。しかし、日本では精神障害のある人びとは公衆衛生や隔離収容の対象として扱われてきた長い歴史を有し、その爪痕は今回の事件によっても明らかとなりました。事件の被疑者らは、障害のある我が子のことを相談できず、近隣に迷惑をかけることを避けて隠したとの報道もあります。「そういう人がいることを知らなかった」「障害のある人がいるらしいとは思ったけれど・・」といった声も聞こえています。また、相談を受けたり事態を把握していても、法的根拠がなければ介入の手立てを講じることのできない行政機能の脆弱さも露呈しています。

 地域移行や地域共生社会の実現という大義を果たすには、障害のある人やその家族のことを近隣住民が「我が事」として考えられるような、寛容で温かい社会の創生が求められます。私たち精神保健福祉士は、相談することを恥じたり諦めたりしなくて済むよう困難をかかえる一人ひとりに責任をもって丁寧に応じ、また、そもそも相談や救いの求めを発することのできない人びとにこそ、支援をあまねく届ける術をもたなくてはなりません。

 本協会では6月17日に総会を終え、新体制のもとでの活動を始動します。2つの事件に対する憤りや悲しみを課題意識に変えて諸活動を展開し、その過程で情報収集や課題分析を行い、必要な要望や声明の発信、及び注意喚起や情報提供を行っていく考えです。構成員各位からの発信もお待ちしております。

 最後に、今後このような被害者が一人も発生しないことを強く願ってやみません。


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標題 旧優生保護法による不妊手術強制問題に関するお願い
日付 2018年6月25日
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木一惠
提出先  公益社団法人日本精神保健福祉士協会 構成員の皆さまへ

 1949(昭和24)年から1996(平成8)年までの間、「不良な子孫の出生防止」を目的とする旧優生保護法に基づき、少なくとも16,500人近い人が本人の同意なく、また保護者らの同意によって不妊手術を強制されました。同意があったとされる人の中にも同意自体を強制された人もいるのではないかと推定されます。ナチス・ドイツの断種法を参考にした戦前の国民優生法を引き継いで戦後の1948(昭和23)年にこの法律が成立し、1996(平成8)年まで存続していたという事実に今更ながら愕然とします。またこの法律の運用には行政はもちろんのこと医師や福祉施設の職員なども大きな役割を果たしていたはずで、精神障害者や知的障害者の傍らにいて彼らの生きる権利や人としての尊厳を最も守らねばならない人々が、これに加担していた、あるいはせざるを得なかったことに深い悲しみを覚えます。

 しかし振り返って考えてみるに、精神保健福祉士はこの悪しき法律を裁く側であってよいのでしょうか?優生保護法を適用された人は1955(昭和30)年をピークに減少していくとはいえ、障害者差別につながるという批判が徐々に高まる1970(昭和45)年代に入っても統計では1,500人以上の人が強制手術を受けています。一方、残念ながら日本精神医学ソーシャル・ワーカー協会設立(1964年11月)以来の歴史を紐解いてみても、精神科ソーシャルワーカーがこの由々しい人権侵害に言及した記録はありません。多くの精神科ソーシャルワーカーそして精神保健福祉士は、ほとんど問題意識を持たないままに過ごし、たとえ被害者と遭遇していたとしても、人権侵害を侵害とも思わず看過してきたのではないでしょうか。

 1970(昭和45)年代は日本の精神科病床が飛躍的な増床を続けた時代であり、かつ今の長期入院患者の多くはこの時代に入院し、大半が65歳を超えています。日本の精神医療政策と優生政策は、社会に不利益をもたらす(と思われる)ものを排除するという点で同根ではないかと考えます。また精神衛生法(当時)は本人の同意なく保護義務者の同意で強制入院させることができるという点において、優生保護法の適用を容易にさせたと思われます。結婚、出産、子育てなど、人が人として享受すべきいとなみは、あたりまえに生きる権利の体現であり、それを国策によって剥奪された優生保護法の被害者と、ある意味で強制手術を受ける必要もない程に国策によって一般社会から隔離された精神障害者、この2つは明らかに重なっています。精神衛生法は日本の優生政策をより強化するものであったのかもしれません。

 人間の尊厳を価値として働くソーシャルワーカーにとって優生思想は大きな敵です。それに抗して障害や疾病があるだけで不要のものと選別される命を守ることがソーシャルワーカーの使命です。今、私たち精神保健福祉士は理念を具体化するために何をするべきでしょうか?それは遅ればせながらではありますが、「被害者の救済」への支援であり、もっとも火急の課題は「被害者の掘り起こし」だと思います。手術を受けさせられた人たちの大半は当時20、30歳代、未成年も15%弱おられ、今すでに高齢化しているとはいえ、多くの方が生存されている可能性は高いと考えられます。そして精神科病院や障害者福祉施設、あるいは高齢者施設等で働く精神保健福祉士は、彼ら、彼女らに出会っている可能性があるのではないでしょうか?いま司法に救済を求める動きが本格化しようとしており、遅すぎたとはいえ政治解決に向けた取組も始まっています。私たちがなすべきことは一人でも多くの被害者に情報を届けること、被害者が救済や補償につながるような支援をすることだと思います。

 構成員の皆さまには、ぜひこの問題に関心を払っていただき、ご自身の近くにおられるかもしれない被害者の掘り起こし、その後の丁寧な支援を展開していただくようお願い申しあげます。被害者の中には自ら希望を伝えることが難しい方、手術を受けたことの自覚がない方もおられるかもしれません。忌まわしい記憶として封印してこられた方もいらっしゃるでしょう。辛抱強く、きめ細やかな相談対応が望まれます。

 本協会は、行政への連絡・要望や日本弁護士連合会など関係団体との協働も視野に入れ、支援の申し出に対応していく所存です。

 構成員の皆さまのご協力を切にお願い申しあげます。


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