要望書・見解等

2017年度


標題 ギャンブル等依存症対策の法制化に関する意見
日付 2017年5月25日
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木一惠
一般社団法人日本アルコール関連問題ソーシャルワーカー協会 会長 岡崎直人
提出先 与党「ギャンブル等依存症対策の法制化に関するワーキングチーム」座長 中谷元 様 他

 現在、ギャンブル等依存症対策の法制化に向けて検討が進められていることと存じます。

 ギャンブル等依存症対策基本法(以下「本法」という。)の制定は、ギャンブル等依存症対策として我が国初めてのものとして意義深いものであります。一方で、「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」(以下「IR推進法」という。)への批判対策としての意味合いを色濃く映し出している様相も垣間見えます。

 本法が実効性のある法律として機能するために、精神障害者の社会的復権と福祉の向上に取り組む専門職能団体として、下記の通り、意見を述べます。

1.ギャンブル等事業者及び消費者金融の広告規制を本法策定よりも優先すべきです。また、事業者へは自主的な取組みへの尊重ではなく、事業者であることの責任に基づく一定の費用負担も含めて、積極的に国が規制や予防等の実施を図るべきです。

2.アルコール健康障害対策と同じ枠組みで行われることに反対します。同じ依存症であってもアルコール依存症の治療施設、回復施設、援助者と比してそれぞれが圧倒的に不足している現状においては、治療・援助体制を作ることが喫緊の課題です。本法成立以前にギャンブル等依存症問題の調査・研究を踏まえたうえで治療・援助体制の構築を優先すべきです。

3.ギャンブル等依存症に関し専門的知識を有する者、ギャンブル等依存症を有し、又は有していた者及びその家族を代表する者、社会福祉専門職等によって構成する関係者会議を設けるべきです。本法に基づく基本計画や全国展開される対策が総合的、計画的、効果的かつ効率的に推進されるための合意形成には必要不可欠のことと考えます。

4.ギャンブル等依存症により、貧困やDV・虐待・離婚などの家庭内問題、自殺や犯罪など多くの社会生活上の問題が起こり得ます。都道府県における相談窓口等の拡充のためには、ギャンブル等依存症及び関連問題を支援する資質を備えた社会福祉専門職の配置が必要不可欠です。

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標題 障害福祉サービス等報酬改定に向けた要望書
日付 2017年5月25日
発翰
番号
JAPSW発第17-71号
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木一惠
提出先 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部 部長 堀江裕 様

 平素より本協会事業に格別のご理解、ご協力を賜り、深く感謝申しあげます。

 さて、厚生労働省では「我が事・丸ごと」の地域共生社会の実現に向けて、改革の背景と方向性を示され、当面の改革工程に基づき検討課題に取り組まれていることと存じます。間もなく開始される2018年度障害福祉サービス等報酬改定に向けた検討も、地域共生社会の実現を視野に入れて行われるものと承知しております。

 つきましては、この度の障害福祉サービス等報酬改定の検討に際して、本協会はソーシャルワーカーとして精神障害者の社会的復権を目指し、地域生活における相談支援を実践する専門職の立場から、下記の通り要望いたしますので、精神障害者もあたり前に暮らせる地域共生社会を実現するために、ご高配のほどよろしくお願いいたします。

1.指定障害福祉サービスに関すること
1)自立訓練(生活訓練)

○訪問による生活訓練サービス費の報酬単価の上乗せを検討してください。
○生活訓練サービス費(2)において、所要時間2時間以上の場合の報酬を新設してください。
【理由】通所サービスの利用に馴染めず、自宅に引きこもりがちになる精神障害者が多くいるため、訪問による自立訓練は、社会参加を促す一助となっています。きめ細やかな本支援に対して、適正に評価してください。また、2時間以上の場合の報酬の新設は、例えば、バスや電車の乗降等の訓練の実施が2時間未満では難しいことからも、訓練内容に照らして必要と考えます。

2)就労支援
○相談支援事業所においても、就労定着支援を実施できるようにしてください。その際の報酬は、地域移行支援サービス費に照らして、ひと月につき2,300点が適正と考えます。
【理由】現行では、就職し福祉サービスの利用が無くなると、就労定着をフォローできる関係機関が限られてしまいます。精神障害者が企業等に定着していくことは、本人にとっても、企業等にとっても重要な課題となります。相談支援事業所において就労定着支援を実施することは、大いなる見守りにつながると考えます。

○就労継続支援A型サービス費については、労務管理について評価し、「初期労務管理加算(仮称)」を新設してください。
【理由】就労継続支援A型はB型と違い労務管理業務に大きな労力を必要とします。特に利用初期においては、社会保険関連の書類の作成及び提出等B型にはない業務と経費が発生します。そのため、暫定支給決定によるアセスメントから個別支援計画作成までの基本的な関わりができていることを前提として、例えば「初期労務管理加算(仮称)」を新設して、雇用時の労務管理関連の業務を適正に評価することが必要と考えます。

○就労移行支援において2年間の標準利用期間を超えた場合でも、報酬単価を就労支援継続B型と同程度にして継続利用を可能にしてください。
【理由】一般就労を目指して2年間努力してきた利用者が、病状の悪化等により就労移行支援の利用開始から2年を経過する時期において就職活動ができなくなったものの、就労をあきらめられず、支援を受け続けたいという場合など、精神障害者の病状の波にも対応できる制度設計が必要と考えます。

○就労移行支援については、基本報酬の見直しも含め、より質の高い支援を行う体制を整備した事業所を評価するしくみに変えてください。
【理由】そもそも就労移行支援事業は、利用者に就労移行してもらうことが使命であり、基本報酬も他事業より高く設定されています。就労移行は本来の目的であり、就労移行にかかる加算を高く設定するのではなく、むしろ支援の質を担保する加算を評価していただきたいと思います。単に就労移行を評価するのでなく、フルタイム雇用につなげた人数を評価したり施設外支援の活用が多い事業所を評価したりするしくみを検討してください。

○就労定着支援体制加算を継続してください。
【理由】前回の改定で創設された就労定着支援体制加算は、6か月から36か月までの就労定着者に対する就労移行支援事業所による支援を評価するもので、きちんと支援したことが評価される大変意義のある改定でした。これによって、厚みのある支援を受けられた方は多かったと思います。そのため、就労定着支援に係るサービス費とは別に、就労移行支援事業において継続した支援を受けられるように、就労定着支援体制加算を継続してください。

3)共同生活援助
○重度対応型グループホームの設置を促進するためには、仕事量を適正に評価してください。また、重度の基準を現行の障害支援区分において3以上として設定してください。
【理由】「社会保障審議会障害者部会報告書」(2015年12月14日)においては、「障害者の地域移行の受け皿となるグループホームについて、重度障害者に対応することができる体制を備えた支援等を提供するサービスを位置付け、適切に評価を行うべきである」とされております。精神障害者の地域移行支援を進めるためには、重度対応型グループホームの利用は欠かせません。精神障害者の場合は、支援の必要量に比べて障害支援区分が低く出る傾向は続いており区分4以上になる方が少ないため、緩和措置が必要です。

○重度の精神障害者の対象者は、病状ではなく、生活のしづらさで判断してください。
【理由】重度の精神障害者とは、入院治療は必要ないとの判断があるものの、コミュニケーションを取る際に本人の特徴理解が必要な人、一定の幻覚妄想が残存し行動障害を伴う(妄想に左右されるなど病状による生活のしづらさがある)人と考えます。
 具体的には、以下のような生活のしづらさを持つ精神障害者を重度対応型グループホームの対象として想定する必要があります。
・長期入院による地域生活への不安がありこの不安や緊張から精神症状が揺れやすい特性がある人
・強いこだわりによる生活のしづらさがある人
・病状により判断に現実性が乏しく生活の力の見立てが支援者と大きく異なる人
・支援へのつながりにくさがある人
・これらにより地域生活の体験(チャレンジ)と生活技術や社会性の再獲得が必要な人
・暮らしの場において服薬・体調管理や金銭管理の頻回な支援や、不安による頻回な確認への十分な対応が必要な人
・身体合併症があり医療的ケアが必要な人

2.指定相談支援に関すること
1)地域相談支援(地域移行支援)について

○地域移行支援の利用を促進するため、地域移行支援に関する一定の研修を修了した精神保健福祉士を配置した事業所に、特定の加算をつけてください。
【理由】精神疾患により1年以上入院している患者は、約18.5万人いるとされていますが、地域移行支援の給付実績は500件前後で推移しているのが実情です。長期入院している患者の退院支援を促進するために、地域移行支援の一層の促進を期待します。そのために、地域移行支援に関する一定の研修を修了した精神保健福祉士を配置して地域移行支援に取り組んだ指定一般相談支援事業所に対して、特定の加算を設ける必要があると考えます。

2)地域相談支援(地域定着支援)
○地域定着支援の活用を促進するために、夜間帯のかけつけ支援、触法等の障害者に対する対応支援、電話やメールが頻回な方へ支援を加算の対象にしてください。
【理由】精神障害者が地域生活を安定して過ごすためには、見守り支援である地域定着支援の拡充が必要です。そのために緊急時支援費が設定されていますが、夜間の緊急時支援においては、少ないマンパワーで支援を行っている現状にあるため、さらなる加算が必要です。
 また、地域定着支援は医療観察法に基づく通院医療の利用者等も対象となりますが、宿泊型自立訓練・共同生活援助には地域生活移行個別支援特別加算があるように、医療観察法のケア会議に呼ばれる頻度や関係機関との連絡調整の多さ、本人や関係者の見守りをしていくために、地域定着支援にも同様の加算が必要です。
 さらに、精神障害の特性から、病状が不安定になっている場合や不安感が募っている場合は、一時的に電話やメール相談の回数が頻回になることもあるため、頻回に対応した際の集中支援加算を新設することが適切であると考えます。

3)計画相談支援
○現行で特別地域加算はありますが、移動距離に応じた加算を新たに検討してください。
【理由】山間部や過疎化が進んでいる地域においては、交通の利便性が悪く、訪問する際の移動距離が長く時間をたくさん必要とする場合が多くありますので、移動距離に応じた報酬の設定も必要と考えます。

○月に4回以上の対面支援をした場合の「集中支援加算」を新設してください。
【理由】モニタリングは、毎月や3か月、6か月などその方の状態に応じて頻度を調整し、その方との関係性を大切にしながら行っています。精神障害者の場合、毎月のモニタリングとしている場合であっても、その方の状況から月に複数回面接することもあります。このため、対面による支援を月4回以上実施した場合は、集中支援加算の算定できるようにすることが必要であると考えます。

○ピアサポーターが、自立生活援助、地域移行支援、就労定着支援など活躍する場を広げていくために、ピアサポーターを配置した事業所に対する一定の加算を要望します。加算の対象となるピアサポーターは、一定の養成研修の修了を必須とし、その養成研修は専門職も一緒に受講することを要望します。
【理由】ピアサポーターの活躍や実践は全国各地で行われていますが、その養成のための研修カリキュラム、活動の場及び報酬に係る補助等は都道府県ごとに異なり、「精神障害者地域移行支援・地域定着支援事業」に限ってみても全国一律の基準はなく、位置づけが不明瞭です。
 このような現状の中では、ピアサポーターの雇用は難しく、ピアサポーターによる支援を必要としている人に安定したサービスを提供することができません。地域移行等に携わるピアサポーターの資格要件に、一定の研修受講を明記することで、地域移行支援チームの一員として、他の専門職と対等に活躍することが期待できると考えます。
 また、2018年度から始まる、自立生活援助、就労定着支援などへのピアの活躍の場が広がることも期待されます。

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標題 改正障害者総合支援法の施行に向けた要望書
日付 2017年5月25日
発翰
番号
JAPSW発第17-70号
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木一惠
提出先 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部 部長 堀江裕 様

  平素より本協会事業に格別のご理解、ご協力を賜り、深く感謝申しあげます。

 さて、厚生労働省では「我が事・丸ごと」の地域共生社会の実現に向けて、改革の背景と方向性を示され、当面の改革工程に基づき検討課題に取り組まれていることと存じます。現在2016年に改正となった障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(以下「改正障害者総合支援法」という。)の施行に向けた準備も、地域共生社会の実現を視野に入れて行われるものと承知しております。

 つきましては、2018年4月の改正障害者総合支援法の施行に向けて、本協会はソーシャルワーカーとして精神障害者の社会的復権を目指し、地域生活における相談支援を実践する専門職の立場から、下記の通り要望いたしますので、精神障害者もあたり前に暮らせる地域共生社会を実現するために、ご高配のほどよろしくお願いいたします。


1.就労支援に関すること

○利用者自己負担のない制度にしてください。
【理由】利用者の中には、一割の自己負担が発生するため、自ら利用日数を減らす方もおられます。自己負担のある就労系事業所の利用者は、働いているのに利用料を払うため、自己負担のない利用者と比べ、大きな不公平感を感じています。公平なサービス利用を受ける権利を考えると一律自己負担のない制度にすることを求めます。

○就労継続支援B型については、B型アセスメントを希望者のみの実施としてください。
【理由】働けるかどうかを事前にアセスメントされてからでなければ利用ができないしくみは、あたかも1722年に英国で実施されたワークハウス・テスト法を彷彿とさせます。一般企業では働けないという烙印を押されて初めて就労継続支援B型の利用を許されるというしくみは、屈辱的であり人権侵害にもあたると考えます。
 またサービス等利用計画と合わせ、このアセスメントの実施によって、B型利用希望者はその正式利用までに1~2か月を要します。その間にモチベーションの低下や生活リズムや病状の悪化などを起こす方もおられます。ようやく福祉的就労の入り口まできた方にとっては不必要に利用を待たされるものであり、この制度は廃止してください。

2.指定相談支援に関すること
1)地域相談支援(地域移行支援)
○精神科に長期入院している住民の現状の把握をするために、各地方自治体別で1年以上の入院患者数と、その内65歳以上の人数を明らかにし各地方自治体に公表してください。
【理由】各地方自治体は、長期入院患者の地域移行について、何が地域課題になっているのかが分かりにくい状況です。
 第5期市町村障害福祉計画の「入院中の精神障害者の地域生活への移行」について効果的な基盤整備量を設定するためにも、長期入院患者数を各地方自治体が把握して、目標数値に対する進行状況の確認と手立てができるようにしてください。また、各地方自治体が住民の長期入院患者数のうち高齢者の人数を把握することで、高齢分野との共通の課題として自立支援協議会や地域ケア会議での協議が可能になります。入院中ということで住民の支援を病院だけにお任せするのではなく、地方自治体として入院中の住民にアプローチする根拠としてください。

○都道府県に対しては、指定一般事業所の実態の把握、指導の強化を義務付けてください。
【理由】地域相談支援の給付数は、制度が開始された2012年度から4年経過した現在も、国が想定していた給付数の20%にも満たない低調な状況が続いています。指定一般相談支援事業所は都道府県が指定するが、実態として特に指導は行われておらず、自らの都道府県の各圏域において機能する指定一般相談支援事業所の設置数やその支援の中身の質といったことは把握し切れていないのが実情となっています。
 指定一般相談支援事業所も更新制にする、指定は受けたが人員等にて実際には依頼を断っているといった事業所に対して都道府県が指導する、または指定を取り消すといったことも検討が必要です。中身のある指定一般相談支援事業所が圏域にどれぐらいあるのかという実態を都道府県が把握したうえで質の向上に向けた技術的な支援や体制整備を考えていく必要があります。

○措置入院者及び医療保護入院者については、入院期間にかかわらず地域移行支援の対象者としてください。
【理由】地域移行支援は、精神科病院に入院している精神障害者である場合において、直近の入院期間が1年以上の入院者を中心に、1年未満の入院者であっても、例えば、措置入院や医療保護入院から退院する者で住居の確保などの支援を必要とするものや地域移行支援を行わなければ入院の長期化が見込まれる者については対象とすることができるとしています。
 入院中及び退院後に本人の望む生活を実現するためには入院中からの関わりが効果的であることから、措置入院者及び医療保護入院者については、入院期間にかかわらず地域移行支援の対象者としてください。

2)計画相談支援
○主任相談支援専門員は、精神保健福祉士の資格を有し、OJTやスーパーバイズをするスキルを有し、市町村の自立支援協議会への貢献する人材を求めます。そのような「主任相談支援専門員(仮称)」を配置した事業所に、配置加算を新設してください。
【理由】「相談支援の質の向上に向けた検討会における議論のとりまとめ」においても記載されているように、「主任相談支援専門員(仮称)」は、事業所や地域において指導的役割を担う者であって、相談支援の仕組みを支える中核的な人材と位置付けるべきです。そのためには、精神保健福祉士等の国家資格を有していることを条件としてください。また、期待される役割を十分に果たすために、その活動の責任エリアの提示、所属する自らの法人や機関ではなく、責任エリア全体の人材育成を担うこと、地域で機能するために名誉職ではないことを示すためにも実務経験を必須とし、更新制にするなどの基準の設置が必要だと考えます。

○市町村の責務である委託相談は、市町村の裁量に任されているのが現状ですが、相談支援の質の担保のためには、委託相談は重要です。全市町村で、委託相談支援事業所を設置する義務を明文化してください。
【理由】全国3,299の指定一般相談支援事業所のうち、市町村から委託を受けているのは1,407事業所と全体の43%に留まっている中(2015年4月時点)、移動の時間や距離、マンパワー不足を理由に相談支援を受けていない指定特定・指定一般相談支援事業所も多いのが実情です。長期入院患者への退院支援の意欲喚起や、福祉サービス利用につながっていない方などは、委託相談によって地域生活が過ごせるような仕組みが必要です。そのためには、全市町村で委託相談支援事業所を設置し、基本相談が具体的に行われるよう求めます。

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標題 生活保護受給者におけるぱちんこ等の状況等調査に関する意見
日付 2017年5月16日
発翰
番号
JAPSW発第17-52号
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木一惠
提出先 厚生労働大臣 塩崎恭久 様

 2017年3月3日付の事務連絡「生活保護受給者におけるぱちんこ等の状況の把握について(依頼)」に基づいて実施された「生活保護受給者のぱちんこ等の状況等調査」に関して、調査を実施することとなった経緯自体に甚だの疑義を覚えるとともに、本協会としての意見を下記の通り申しあげます。

1.調査実施が生活保護受給者への偏見の助長につながることを危惧します。

 生活保護法に基づいて支給される扶助費を含め被保護世帯の収入の使途は、基本的に当該世帯の自由とされています。

 今回の状況等調査における調査項目が、保護費の使途としてぱちんこ等に使われたことに対する指導件数やぱちんこ等で得た収入の未申告による不正受給といった項目に限定されていることは、あたかも保護受給者がギャンブルに保護費を浪費しているとの印象を社会に与えかねず、生活保護バッシングを助長する危険性があると考えます。また、事務連絡にもありますように現行法上は、娯楽とされているぱちんこ等の状況等を調査することは、保護費の使途に対する監視を強めることにつながると危惧します。

 したがって、今後調査結果を公表する場合には、特段の配慮が必要であると考えます。


2.調査の回答様式にあるギャンブル依存の疑いのあるケースの事例が不適切と考えます。

 特に事項1及び事項4の事例は、ケースワークの観点やギャンブル依存への対応として不適切と考えます。依存及び依存症に陥っている受給者に対して、就労指導や口頭指導(どのような口頭指導を行ったかについては言及がない)を行うことでは、依存及び依存症の回復や解決にはつながりません。こうした事例を例示することは、現場のケースワーカーの方々にギャンブル問題に関する不適切な指導を蔓延させることにもつながりかねません。

 本来、ケースワーカーの役割は、被保護者の生活状況を困難にしているギャンブル問題への初期介入として適切な医療につなぐことの助言指導や、日常生活の中での回復を確かなものとするための福祉的支援を行うことにあります。時宜に叶う介入のないままに、就労を急がせることや濫費の非を責めるような指導は、かえって依存症の悪化や重症化を招くことになります。現場のケースワーカーを対象とした依存症に関する研修等の実施こそが急務の課題であると考えます。

以上

 なお、本来はギャンブルであるぱちんこや競馬等を「娯楽」として広く普及させていることが、ギャンブル依存症を蔓延させる大きな要因となっていることは論を待たないところでありますが、一方において、薬物関連問題及び依存症の例に見るように、法的な規制強化のみでは根本的な問題解決とならないこととも併せて、この問題については、別の機会に改めて意見表明をする所存です。


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(参考)各都道府県等生活保護担当係長宛事務連絡「生活保護受給者におけるぱちんこ等の状況の把握について〈依頼〉」(厚生労働省社会・援護局保護課保護係長/平成29年3月9日付)
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標題 「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律案」の審議経過に関する見解
日付 2017年4月17日
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木一惠

 本年2月28日に閣議決定され、現在、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(以下「精神保健福祉法」という。)の一部を改正する法律案(以下「改正法案」という。)が国会で審議されています。この一連の経過に鑑み、現段階での本協会の見解を下記の通り表明します。

1.法改正の趣旨及び措置入院制度の見直しについて

 本協会は、かねてより、精神保健福祉法における措置入院制度の見直しについて、相模原市の障害者支援施設における事件と切り離して協議検討するよう要望してきました。この度、政府が審議過程において、改正法案概要の「改正の趣旨」から相模原事件の再発防止を法改正の目的であると誤解させるような表現を削除したことにつき、遅すぎた感は否めないものの本協会としては肯定的に受け止めています。報道過程を通じて形成される歪んだ社会的認知のままに、法改正に至った過去の過ちを繰り返さぬよう、国会審議中にあって食い止めた姿勢は評価したいと思います。

 また、クライエントの自己決定の尊重を専門職アイデンティティとして重視する本協会の意見が汲み入れられ、個別ケース検討会議における本人の参加が明記されたことも妥当な判断と考えます。

 なお、今回の法改正に関しては、2013年改正時における3年後の検討規定に基づき、厚生労働省に設置された「これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会」において、1年間に渡って協議されていました。改正法案では、2013年改正以前に指摘されていた措置入院制度における保健所の機能強化をはじめとして、措置指定病院における医療と支援の質の向上、指定医制度の見直しが盛り込まれました。長年未着手であった強制入院制度としての措置入院制度の見直しは、本協会がこれまで要望してきたことでもあります。

 今後、政府はこれらの改正事項の運用における措置入院の実態把握と評価を行い、権利擁護機能の強化を含めさらなる改正を行うことが望まれます。


2.非自発的入院のあり方に関する継続的な検討について

 非自発的入院に対する権利擁護機能の体制が構築されていない現段階において、医療保護入院制度の存続や市町村長同意の要件緩和は、歴史的課題の積み残しとして改正法案が抱える重大な課題であると考えます。

 本協会は、これまでにも意思決定支援の仕組みや非自発的入院における行政責任の明確化を求めてきました。今回の法案ではこうした点に関する改正提案が為されなかったことから、改めて厚生労働省に検討会を設置し、3年以内の見直しに向けて協議を継続することが妥当であると考えます。その際、2016年度より実施されている精神医療審査会の機能強化の実態についても、その成果と妥当性を評価することが求められます。

 こうした見直しの必要性に関する認識が有名無実化しないよう、今国会における法案の採決にあたり、附帯決議を付すことが適当であると考えます。


3.精神保健福祉法の意義の再検討について

 精神障害のある人々の地域生活支援は、地域包括ケアシステムの中で一体的に行われることが望ましいと考えます。障害福祉に関する事項は既に障害者総合支援法に一元化されており、精神保健福祉法の「福祉」に関する再整理が必要です。

 政府が、相模原事件の再発防止を法改正の趣旨から削除したことは、精神病者監護法から精神衛生法の改正等々と連綿と続く、社会防衛策としてのこの法の成り立ちそのものを見直す覚悟の表れであると認識し、精神科医療をその他の医療から切り離して規定する現行の精神保健福祉法の抜本的見直しの端緒に立つことを示すものと考えます。

 非自発的入院制度の存置の是非についてさらなる検討を重ね、国際連合の「精神疾患を有する者の保護及びメンタルヘルスケアの改善のための諸原則」や「障害者の権利に関する条約」に適った入院制度の創設へと歩を止めることがないよう求めるとともに、本協会も諸活動を展開します。


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