要望書・見解等

2017年度


標題 生活保護受給者におけるぱちんこ等の状況等調査に関する意見
日付 2017年5月16日
発翰
番号
JAPSW発第17-52号
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木一惠
提出先 厚生労働大臣 塩崎恭久 様

 2017年3月3日付の事務連絡「生活保護受給者におけるぱちんこ等の状況の把握について(依頼)」に基づいて実施された「生活保護受給者のぱちんこ等の状況等調査」に関して、調査を実施することとなった経緯自体に甚だの疑義を覚えるとともに、本協会としての意見を下記の通り申しあげます。

1.調査実施が生活保護受給者への偏見の助長につながることを危惧します。

 生活保護法に基づいて支給される扶助費を含め被保護世帯の収入の使途は、基本的に当該世帯の自由とされています。

 今回の状況等調査における調査項目が、保護費の使途としてぱちんこ等に使われたことに対する指導件数やぱちんこ等で得た収入の未申告による不正受給といった項目に限定されていることは、あたかも保護受給者がギャンブルに保護費を浪費しているとの印象を社会に与えかねず、生活保護バッシングを助長する危険性があると考えます。また、事務連絡にもありますように現行法上は、娯楽とされているぱちんこ等の状況等を調査することは、保護費の使途に対する監視を強めることにつながると危惧します。

 したがって、今後調査結果を公表する場合には、特段の配慮が必要であると考えます。


2.調査の回答様式にあるギャンブル依存の疑いのあるケースの事例が不適切と考えます。

 特に事項1及び事項4の事例は、ケースワークの観点やギャンブル依存への対応として不適切と考えます。依存及び依存症に陥っている受給者に対して、就労指導や口頭指導(どのような口頭指導を行ったかについては言及がない)を行うことでは、依存及び依存症の回復や解決にはつながりません。こうした事例を例示することは、現場のケースワーカーの方々にギャンブル問題に関する不適切な指導を蔓延させることにもつながりかねません。

 本来、ケースワーカーの役割は、被保護者の生活状況を困難にしているギャンブル問題への初期介入として適切な医療につなぐことの助言指導や、日常生活の中での回復を確かなものとするための福祉的支援を行うことにあります。時宜に叶う介入のないままに、就労を急がせることや濫費の非を責めるような指導は、かえって依存症の悪化や重症化を招くことになります。現場のケースワーカーを対象とした依存症に関する研修等の実施こそが急務の課題であると考えます。

以上

 なお、本来はギャンブルであるぱちんこや競馬等を「娯楽」として広く普及させていることが、ギャンブル依存症を蔓延させる大きな要因となっていることは論を待たないところでありますが、一方において、薬物関連問題及び依存症の例に見るように、法的な規制強化のみでは根本的な問題解決とならないこととも併せて、この問題については、別の機会に改めて意見表明をする所存です。


[PDF版はこちら(104KB)]

(参考)各都道府県等生活保護担当係長宛事務連絡「生活保護受給者におけるぱちんこ等の状況の把握について〈依頼〉」(厚生労働省社会・援護局保護課保護係長/平成29年3月9日付)
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標題 「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律案」の審議経過に関する見解
日付 2017年4月17日
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木一惠

 本年2月28日に閣議決定され、現在、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(以下「精神保健福祉法」という。)の一部を改正する法律案(以下「改正法案」という。)が国会で審議されています。この一連の経過に鑑み、現段階での本協会の見解を下記の通り表明します。

1.法改正の趣旨及び措置入院制度の見直しについて

 本協会は、かねてより、精神保健福祉法における措置入院制度の見直しについて、相模原市の障害者支援施設における事件と切り離して協議検討するよう要望してきました。この度、政府が審議過程において、改正法案概要の「改正の趣旨」から相模原事件の再発防止を法改正の目的であると誤解させるような表現を削除したことにつき、遅すぎた感は否めないものの本協会としては肯定的に受け止めています。報道過程を通じて形成される歪んだ社会的認知のままに、法改正に至った過去の過ちを繰り返さぬよう、国会審議中にあって食い止めた姿勢は評価したいと思います。

 また、クライエントの自己決定の尊重を専門職アイデンティティとして重視する本協会の意見が汲み入れられ、個別ケース検討会議における本人の参加が明記されたことも妥当な判断と考えます。

 なお、今回の法改正に関しては、2013年改正時における3年後の検討規定に基づき、厚生労働省に設置された「これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会」において、1年間に渡って協議されていました。改正法案では、2013年改正以前に指摘されていた措置入院制度における保健所の機能強化をはじめとして、措置指定病院における医療と支援の質の向上、指定医制度の見直しが盛り込まれました。長年未着手であった強制入院制度としての措置入院制度の見直しは、本協会がこれまで要望してきたことでもあります。

 今後、政府はこれらの改正事項の運用における措置入院の実態把握と評価を行い、権利擁護機能の強化を含めさらなる改正を行うことが望まれます。


2.非自発的入院のあり方に関する継続的な検討について

 非自発的入院に対する権利擁護機能の体制が構築されていない現段階において、医療保護入院制度の存続や市町村長同意の要件緩和は、歴史的課題の積み残しとして改正法案が抱える重大な課題であると考えます。

 本協会は、これまでにも意思決定支援の仕組みや非自発的入院における行政責任の明確化を求めてきました。今回の法案ではこうした点に関する改正提案が為されなかったことから、改めて厚生労働省に検討会を設置し、3年以内の見直しに向けて協議を継続することが妥当であると考えます。その際、2016年度より実施されている精神医療審査会の機能強化の実態についても、その成果と妥当性を評価することが求められます。

 こうした見直しの必要性に関する認識が有名無実化しないよう、今国会における法案の採決にあたり、附帯決議を付すことが適当であると考えます。


3.精神保健福祉法の意義の再検討について

 精神障害のある人々の地域生活支援は、地域包括ケアシステムの中で一体的に行われることが望ましいと考えます。障害福祉に関する事項は既に障害者総合支援法に一元化されており、精神保健福祉法の「福祉」に関する再整理が必要です。

 政府が、相模原事件の再発防止を法改正の趣旨から削除したことは、精神病者監護法から精神衛生法の改正等々と連綿と続く、社会防衛策としてのこの法の成り立ちそのものを見直す覚悟の表れであると認識し、精神科医療をその他の医療から切り離して規定する現行の精神保健福祉法の抜本的見直しの端緒に立つことを示すものと考えます。

 非自発的入院制度の存置の是非についてさらなる検討を重ね、国際連合の「精神疾患を有する者の保護及びメンタルヘルスケアの改善のための諸原則」や「障害者の権利に関する条約」に適った入院制度の創設へと歩を止めることがないよう求めるとともに、本協会も諸活動を展開します。


[PDF版はこちら(182KB)]
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