要望書・見解等

2017年度


標題 就労継続支援A型事業所の事業閉鎖問題と適正運用について(要望)
日付 2017年9月25日
発翰
番号
JAPSW発第17-207号
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木一惠
提出先 厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部 部長 宮嵜雅則 様

 平素より本協会事業に格別のご理解、ご協力を賜り、深く感謝申しあげます。

 さて、先般、岡山県倉敷市と香川県高松市で就労継続支援A型事業所を運営していた法人が事業所を閉鎖し、200人以上の障害者を解雇したことについて、主に当該法人の責任を追及する論調の報道が流されています。確かに、解雇そのものは運営法人が「経営の悪化のため」に事業を閉鎖する決定をしたことが直接の原因です。しかしながらその背景に今春の指定基準厳格化などの省令が大きく影響していることは明らかです。

 適正な運営ができなかった法人の責任はもちろん問わなければなりませんが、結果として解雇という不利益を受けたのは利用者である障害者本人であり、職業も支援も同時に失うという体験は、経済的、社会的、精神的に大きな傷となったことは想像に難くありません。

 就労継続支援A型事業所は、その運営上の課題が早くから問題視されていたにも関わらず有効な対策のないまま経過し、毎年大きく増加を続け、経営主体に占める営利法人の割合も5割を超える状況となっています(平成27年社会福祉施設等調査)。規制を緩和し、株式会社等にも参入を可能とし営利本位も許容した結果が今回の大量解雇問題につながっていることは明白です。それらは当該事業者の問題であると同時に、厚生労働省の行政不作為によるものと言わざるを得ません。社会福祉基礎構造改革により社会福祉サービスに市場原理や規制緩和が導入されたことをすべて否定するものではありませんが、事業の継続性とサービスの質を担保するための方策が脆弱であったという感は否めません。

 そもそも就労継続支援A型事業は、「通常の事業所に雇用されることが困難であって、雇用契約に基づく就労が可能である者に対して行う雇用契約の締結等による就労の機会の提供及び生産活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の必要な支援を行う(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律施行規則第六条の十)」とされています。「通常の事業所に雇用されることが困難」とされている対象者が、最低賃金以上の労働を行うためには、相当な専門性と丁寧な支援スキルが必要となります。また労働法に則って労働者を雇用し、採算をとって経営することと、どちらも簡単にできるものではないはずのことを専ら「企業努力」に押し付けてきたのが現状の制度上の矛盾ではないかと思料します。

 今後も同様の事例が続くことは予想されます。経営困難で事業を閉鎖する事業者が、解雇される障害者の再雇用支援を適切に行えるとは考えにくく、行政の監督責任において、当該障害者の精神的サポートも含め、遅滞なく適切に行う必要があります。また、非営利性と公益性を原則とする本制度本来の目的と合致しない事業者は、厳正に指導し、さらにはそのような事業者が参入できない仕組みを講じるべきと考えます。

 しかし喫緊の課題として、これ以上解雇によって不利益を被る障害者が出ないよう、制度及び運用上の不備に関しては早急に改善していただきたく、下記のとおり要望いたします。



1.就労継続支援A型事業所の閉鎖に伴い解雇された障害者を対象とする就労相談及び生活相談の窓口を、事業者を指定した自治体の責任において設置するよう適切に指導してください。

2.就労継続支援A型事業の適正運営のための施策を早急に検討し、実施してください。

  [PDF版はこちら(192KB)]
 ▲上へもどる

標題 成年後見制度における審判書の記載事項にかかる要望書
日付 2017年7月11日
発翰
番号
JAPSW発第17-135号
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木一惠
提出先 最高裁判所 事務総局 家庭局長 様

 平素より本協会事業に格別のご理解、ご協力を賜り、深く感謝申しあげます。
 さて、本協会は、精神障害者の権利擁護の重要性に鑑み、2009年から認定成年後見人ネットワーク「クローバー」(以下「クローバー」という。)を設置し、主に精神障害者に対する成年後見人等の養成及び受任者に対するサポートを行っており、現在、「クローバー」登録者は147人、受任件数は109件となっています。第三者が成年後見人等に就任し職務を行うにあたっては、様々な課題がありますが、特に「クローバー」の主たる対象者である精神障害者の支援には特有の困難さがあります。
 つきましては、本協会が「クローバー」の活動を進めていくにあたり、成年後見制度における審判書に成年後見人等の自宅住所が記載されることについて、下記の通り要望します。成年後見制度を利用する精神障害者に、精神保健福祉士としての経験を踏まえ特性に配慮した後見活動を進めていきたく、ご高配のほどよろしくお願いいたします。



<要望事項>
○「クローバー」登録者が選任された旨の審判書の記載において、住所地を自宅以外にも選択できる運用を行ってください。

  【理由】「クローバー」で受任する成年被後見人等の多くは精神障害者です。精神障害の特徴として、病状の悪化時における対応の困難さが挙げられます。そのため精神障害者の支援経験がある精神保健福祉士が成年後見人等を受任する意義があります。 

 しかし、事例によっては精神保健福祉士であっても対応可能な範囲を超える場合もあります。現に成年被後見人等が早朝・深夜に成年後見人等の自宅住所を訪ねてくるなどの事態が発生しており、成年後見人等の同居家族に対して強い不安を与えております。このような場合、審判書に記載された成年後見人等の自宅住所を訪ねることが多い状況です。

 弁護士や司法書士は個人事務所を持つ場合が多く、成年後見人等に就任した際も、自宅住所が審判書に記載されることは少ないと思われます。一方、「クローバー」登録者である精神保健福祉士の場合は、ほとんどが医療機関や社会福祉関係機関に雇用されて勤務する者であり、自宅住所が審判書に記載されています。

 成年後見制度利用促進基本計画にある「利用者がメリットを実感できる制度・運用の改善」との趣旨から見ても、障害特性に適した成年後見人等の選任は必要です。しかし、自宅住所の記載はそれを阻害する要因となっており、「クローバー」では成年被後見人の自宅への度重なる訪問が原因で、成年後見人等が辞任にいたった事例があります。

 以上の理由から、「クローバー」登録者が成年後見人等に就任した際、成年後見制度の審判書に自宅住所以外の記載も選択できる運用を行っていただきたく要望いたします。

  [PDF版はこちら(143KB)]
 ▲上へもどる

標題 成年後見登記事項証明書の記載事項にかかる要望書
日付 2017年7月11日
発翰
番号
JAPSW発第17-134号
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木一惠
提出先 法務省 民事局 局長 小川秀樹 様

 平素より本協会事業に格別のご理解、ご協力を賜り、深く感謝申しあげます。
 さて、本協会は、精神障害者の権利擁護の重要性に鑑み、2009年から認定成年後見人ネットワーク「クローバー」(以下「クローバー」という。)を設置し、主に精神障害者に対する成年後見人等の養成及び受任者に対するサポートを行っており、現在、「クローバー」登録者は147人、受任件数は109件となっています。第三者が成年後見人等に就任し職務を行うにあたっては、様々な課題がありますが、特に「クローバー」の主たる対象者である精神障害者の支援には特有の困難さがあります。
 つきましては、本協会が「クローバー」の活動を進めていくにあたり、成年後見登記事項証明書に成年後見人等の自宅住所が記載されることについて、下記の通り要望します。成年後見制度を利用する精神障害者に、精神保健福祉士としての経験を踏まえ特性に配慮した後見活動を進めていきたく、ご高配のほどよろしくお願いいたします。



<要望事項>
○「クローバー」登録者が成年後見人等に就任した際、成年後見登記事項証明書に記載される住所地を自宅以外にも選択できる運用を行ってください。

  【理由】「クローバー」で受任する成年被後見人等の多くは精神障害者です。精神障害の特徴として、病状の悪化時における対応の困難さが挙げられます。そのため精神障害者の支援経験がある精神保健福祉士が成年後見人等を受任する意義があります。

 しかし、事例によっては精神保健福祉士であっても対応可能な範囲を超える場合もあります。現に成年被後見人等が早朝・深夜に成年後見人等の自宅住所を訪ねてくるなどの事態が発生しており、成年後見人等の同居家族に対して強い不安を与えております。このような場合、成年後見登記事項証明書に記載された成年後見人等の自宅住所を訪ねることが多い状況です。

 弁護士や司法書士は個人事務所を持つ場合が多く、成年後見人等に就任した際も、自宅住所が成年後見登記事項証明書に記載されることは少ないと思われます。一方、「クローバー」登録者である精神保健福祉士の場合は、ほとんどが医療機関や社会福祉関係機関に雇用されて勤務する者であり、自宅住所が成年後見登記事項証明書に記載されています。

 成年後見制度利用促進基本計画にある「利用者がメリットを実感できる制度・運用の改善」との趣旨から見ても、障害特性に適した成年後見人等の選任は必要です。しかし、自宅住所の記載はそれを阻害する要因となっており、「クローバー」では成年被後見人の自宅への度重なる訪問が原因で、成年後見人等が辞任にいたった事例があります。

 以上の理由から、「クローバー」登録者が成年後見人等に就任した際、成年後見登記事項証明書に自宅住所以外の記載も選択できる運用を行っていただきたく要望いたします。

  [PDF版はこちら(143KB)]
 ▲上へもどる

標題 措置入院者に係る退院後生活環境相談員の選任に関する要望書
日付 2017年6月27日
発翰
番号
JAPSW発第17-105号
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木一惠
提出先 厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部部長 堀江裕 様

 平素より本協会事業に格別のご理解、ご協力を賜り、深く感謝申しあげます。
 さて、第193回国会に上程された精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律案は継続審議となりましたが、改正案において措置入院者に対する病院管理者による退院後生活環境相談員の選任が義務づけられていることについて、本協会としても関心を寄せているところです。
 つきましては、措置入院者に係る退院後生活環境相談員に関して以下の通り要望いたしますので、ご配意のほどよろしくお願いいたします。



1.措置入院者に係る退院後生活環境相談員は、原則として精神保健福祉士を選任することとしてください。

   2013年の法改正により医療保護入院者に係る病院管理者による退院後生活環境相談員の選任が義務づけられました。平成26年度障害者総合福祉推進事業「精神保健福祉法改正後の医療保護入院の実態に関する全国調査」(公益社団法人日本精神科病院協会実施)によると、選任された退院後生活環境相談員のうち精神保健福祉士は78.8%で、精神保健福祉士以外の職種も選任されている状況となっております。 

 一方、措置入院は行政処分であり医療保護入院制度との比較においてより強制性の高い入院制度であることからも、権利擁護機能を有する精神保健福祉士を退院後生活環境相談員として選任することを原則とすべきです。

 なお、都道府県病院等及び指定病院においては、作成が予定されている診療ガイドラインに基づき多職種による標準化された診療を行っていくことが求められることから、都道府県病院等及び指定病院の職員を対象とした措置入院制度に係る研修を実施する必要があると考えます。退院後生活環境相談員については、当該研修の受講を必須とすることとしてください。

  2.複数の措置入院者を受け持つ場合の退院後生活環境相談員の担当患者数は20人以内としてください。

   現行では、退院後生活環境相談員の配置の目安は、1人につき概ね50人以下の医療保護入院者を担当することとし、当該相談員が他の業務を兼務する場合はこの目安を参考に担当する医療保護入院者の人数を決めることとされています。先述の全国調査によると退院後生活環境相談員1人の受け持ち患者数(医療保護入院者数)は、平均で16.3人(下限値)~33.4人(上限値)でした。

 措置入院者については、新たに都道府県等による個別ケース検討会議の開催や退院後支援計画の作成、及び措置入院中の病院における退院後支援ニーズアセスメントの作成等が義務づけられることとなります。退院後生活環境相談員は病院内の多職種チームにあって措置入院者の退院支援を中心的に担うこととなります。その業務量の増加や、退院支援における専門的配慮が求められること等を考慮すると、配置の目安としては、複数の措置入院者を受け持つ退院後生活環境相談員については、医療保護入院者と合わせた担当数を20人以内とすることが望ましいと考えます。

  [PDF版はこちら(176KB)]
 ▲上へもどる

標題 2018年度診療報酬改定に関する要望について
日付 2017年6月27日
発翰
番号
JAPSW発第17-104号
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木一惠
提出先 厚生労働省 保険局 医療課長 迫井正深 様

 平素より本協会事業に格別のご理解、ご協力を賜り、深く感謝申しあげます。
 さて、「これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会」報告書では、新たな地域精神保健医療体制のあり方として、「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築」を目指すことを新たな理念として明確化し、精神障害者が地域の一員として安心して自分らしい暮らしをすることができるような方策を検討するべきであるとしています。
 本協会としましては、新たな理念の下、精神障害者の地域生活への移行および地域生活の定着のさらなる強化促進のためには、精神科医療機関内外に渡るネットワークの構築による多機関多職種連携の推進、およびその体制整備が極めて重要であり、それらに対する診療報酬上の適正な評価が必要であると認識しているところです。
 つきましては、以上の観点から、2018年度の診療報酬改定に向けて以下のとおり要望いたしますので、ご高配のほど何卒よろしくお願いいたします。


1.通院・在宅精神療法(I 002)において、精神科を標榜する保健医療機関の外来診療部門に精神保健福祉士を1名以上配置した場合の加算を新設してください。

  <具体的要望内容>
 精神科を標榜する保健医療機関の外来診療部門に精神保健福祉士を1名以上配置し、入院中の患者以外の患者及びその家族に対して、必要に応じて保健所、市町村、障害福祉サービス事業所、介護保険事業所等と連携し、療養生活環境を整備するための支援体制がとられている場合において、通院・在宅精神療法の所定点数に加算できるようにしてください。

<理由>
 通院・在宅精神療法は、精神疾患を有する患者に対して、精神科を担当する医師が一定の治療計画のもとに危機介入、対人関係の改善、社会適応能力の向上を図るための指示、助言等の働きかけを継続的に行う治療方法とされています。そうした治療と併行して、精神保健福祉士が患者の抱える生活課題等に関する相談に応じ、必要な制度や資源に関する情報提供及び利活用支援、関係機関との連絡調整といった生活環境の調整を行うことで、通院・在宅精神療法はより効果が発揮されると考えます。通常は精神保健福祉士による相談支援を必要としない患者についても、外来診療部門に精神保健福祉士を配置することで、必要時に適宜生活課題等の専門的相談支援を受けられる体制を取ることは、特に他者との交流に乏しく社会的に孤立している精神疾患患者に社会参加の機会を提供することにもつながると考えます。

<有効性>
 患者の支援ニーズを的確に把握し医療機関と関係機関との連携を強化していくことで、患者を中心とした支援ネットワークを形成することが可能となります。また、患者の生活上の課題等が病状に大きく影響することから、精神保健福祉士がその解決を支援することにより、患者の安定した地域生活の維持・継続に資することとなります。ひいては診療を担当する医師の負担軽減、入院の予防による医療費抑制への効果が期待できます。

  2.訪問看護ステーションにおいて、精神保健福祉士が単独で訪問した場合も精神科訪問看護基本療養費を算定できるようにしてください。

  <具体的要望内容>
 訪問看護ステーションにおいて、精神科訪問看護基本療養費を算定している患者の割合が7割を超えている場合には、所定の研修を修了している精神保健福祉士の単独訪問による精神科訪問看護基本療養費の算定を可能としてください。

<理由>
 医療機関からの精神科訪問看護については精神保健福祉士の単独訪問が認められている一方で、訪問看護ステーションの訪問では単独訪問が認められておらず、他機関の利用が困難な重篤事例に対する多職種チームとしての生活支援・福祉的対応に限界がある状況になっています。本協会が2016年度末に行った精神障害者に対する訪問実績がある訪問看護ステーションにおける全国調査においても、80.6%の事業者が精神保健福祉の配置の必要性を訴えています(別紙資料1参照)。特に同一事業所内での多職種チーム構成をする一員として福祉制度との連携・就労・ネットワーキングやコーディネート等での専門性と、困難事例への対応能力の向上への期待が回答されています。また、精神保健福祉士の配置が必要とする事業者のうち95.2%が「単独による訪問」の認可が妥当であると回答しています。
 なお、精神科訪問看護は精神障害に対する一定の専門性が求められることから、精神保健福祉士による単独訪問は、精神科訪問看護基本療養費の算定が一定割合以上である事業所に限定するとともに、当該の精神保健福祉士は所定の研修を修了していることを要件とすることが妥当であると考えます。

<有効性>
 福祉専門職である精神保健福祉士の配置により、訪問看護ステーションの精神科多職種チームとしての機能が強化されます。また、障害福祉サービス等の利用が困難な患者への対応能力が向上することにより、当該患者のQOLの向上に資することとなります。さらに、頻回訪問を要する患者の生活状況が改善されることで、訪問回数の抑制、(再)入院の抑制といった効果が期待できます。

  3.精神科地域包括診療料を新設してください。

  <具体的要望内容>
 精神科医療の必要性が高い患者に対して、多職種によるアセスメントに基づいた支援計画を作成し、必要な医療及び障害福祉・介護を提供するとともに、行政機関や学校、職場等の関係機関との調整といった包括的ケアマネジメントを行った場合に、精神科地域包括診療料(仮称)を1月に1回算定できるようにしてください。
なお、当該診療料に係る施設基準及び患者の要件は、厚生労働行政推進調査事業「精神障害者の地域生活支援を推進する政策研究」の分担研究「精神障害者の地域移行における多職種連携によるケアマネジメントに関する研究」において2017年度に作成するガイドライン(案)を踏まえて検討してください(別紙資料2参照)。

<理由>
 地域生活を送るうえで生活課題に対して多職種でケアマネジメントの手法を用いて包括的に支援することは先行研究でも有効性が認められています。患者が抱える生活課題等は外来診療の中で見つかることが多く、医療資源だけで支えられている患者も多く存在しています。そのため、多職種でケアマネジメントの手法を用いて支援を行い、相談支援専門員や介護支援専門員に繋ぎ安定するまでの間、このような精神科地域包括診療料が必要と考えます。

<有効性>
 要望項目の1と同様に、患者の社会的孤立予防に有効に機能するとともに、再入院予防、関係機関との連携の強化による支援ネットワークの形成、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築に資することとなります。

  4.精神保健福祉法に規定する退院後生活環境相談員の業務を診療報酬上評価してください。

  <具体的要望内容>
 医療保護入院による医療機関に入院した患者に対して、選任された退院後生活環境相談員による早期退院のための調整および支援を行った場合であって、当該患者が入院日から起算して1年未満に退院したときに、医療保護入院者退院支援加算(仮称)として退院時に1回に限り所定点数に加算できることとしてください。

<理由>
 2013年の精神保健福祉法改正により、医療保護入院者の退院による地域生活移行の促進措置として、退院後生活環境相談員の選任が病院管理者に義務づけられました。しかしながら、現在は診療報酬による評価はありません。精神保健福祉法の趣旨通り、退院後生活環境相談員を中心とした早期退院に対する支援により医療保護入院者が1年未満で退院した場合への評価をお願いします。

<有効性>
 法定の人員配置規定に対して診療報酬による経済的インテンシブが付くことで、医療保護入院者等の入院の長期化防止が有効に機能することとなります。

  5.精神病棟入院基本料(A 103)における精神保健福祉士配置加算の施設基準のうち、在宅移行率要件を緩和してください。

  <具体的要望内容>
 当該加算の施設基準として掲げられている当該病棟入院患者の1年以内在宅移行率を、現行の9割以上から8割以上に緩和してください。

<理由>
 平成26年度精神保健福祉資料によると、平成25年6月入院患者の状況として、1年以内に退院して家庭復帰等およびグループホーム・ケアホーム・社会復帰施設等に移行したものの割合(以下、「在宅移行率」という。)は全国平均で73.8%でした。一方、1年以内に転院・死亡したものの割合(退院率)は14.3%であり、この割合は今後も同様に推移することが予想されます。そして、残りの11.9%がいわゆるニューロングステイとして1年を超える入院を継続することを示しています(別紙資料3参照)。
 また、厚生労働科学研究費により組織された「重度かつ慢性」に関する研究班の実施した全国調査によると、1年以上の長期入院精神障害者(認知症を除く)のうち6割以上が「重度かつ慢性」基準案に該当していることが明らかになりました。逆に捉えると4割程度は在宅移行可能群であることを示しています。つまり、ニューロングステイとなる11.9%の入院患者のうち4割に該当する4.8%は在宅移行可能群であると捉えることができ、1年以内在宅移行率の現実的な目標値としては、73.8%に4.8%(期待値)を加えた79%あたりとすることが妥当であると考えます。なお、平成26年度精神保健福祉資料より都道府県・政令指定都市別の1年以内在宅移行率をみると、第3四分位数は77.6%となっています。
 以上のことから、精神科入院病棟入院料の精神保健福祉士配置加算における1年以内在宅移行率の基準は、8割以上とすることが適当であると考えます。

<有効性>
 「平成26 年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査の結果について」(2015年10月23日)によると、2014年10月時点における精神保健福祉士配置加算の施設基準の届出は、精神療養病棟入院料では6.2%(289病院のうち18病院)、精神病棟入院基本料では3.5%(372病院のうち13病院)と極めて低位に止まっていますが、特に精神病棟入院基本料においては、精神保健福祉士配置加算の施設基準の届出をしていない最大の理由をみると、「在宅移行率の要件が満たせないため」が 53.1%で最も多くなっています。
 在宅移行率を実現可能な基準とすることで、精神科入院基本料算定病棟に専従の精神保健福祉士を配置する医療機関が増え、懸案となっている3か月超1年未満の入院患者に対する退院支援が手厚くなり、平均在院期間の短縮に資すると考えます。
 また、相対的な在院患者数の減少と相俟って、将来的な入院医療費の縮小に有効に機能するものと思料します。

  資料1~3略

  [PDF版はこちら(366KB)]
 ▲上へもどる

標題 ギャンブル等依存症対策の法制化に関する意見
日付 2017年5月25日
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木一惠
一般社団法人日本アルコール関連問題ソーシャルワーカー協会 会長 岡崎直人
提出先 与党「ギャンブル等依存症対策の法制化に関するワーキングチーム」座長 中谷元 様 他

 現在、ギャンブル等依存症対策の法制化に向けて検討が進められていることと存じます。

 ギャンブル等依存症対策基本法(以下「本法」という。)の制定は、ギャンブル等依存症対策として我が国初めてのものとして意義深いものであります。一方で、「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」(以下「IR推進法」という。)への批判対策としての意味合いを色濃く映し出している様相も垣間見えます。

 本法が実効性のある法律として機能するために、精神障害者の社会的復権と福祉の向上に取り組む専門職能団体として、下記の通り、意見を述べます。

1.ギャンブル等事業者及び消費者金融の広告規制を本法策定よりも優先すべきです。また、事業者へは自主的な取組みへの尊重ではなく、事業者であることの責任に基づく一定の費用負担も含めて、積極的に国が規制や予防等の実施を図るべきです。

2.アルコール健康障害対策と同じ枠組みで行われることに反対します。同じ依存症であってもアルコール依存症の治療施設、回復施設、援助者と比してそれぞれが圧倒的に不足している現状においては、治療・援助体制を作ることが喫緊の課題です。本法成立以前にギャンブル等依存症問題の調査・研究を踏まえたうえで治療・援助体制の構築を優先すべきです。

3.ギャンブル等依存症に関し専門的知識を有する者、ギャンブル等依存症を有し、又は有していた者及びその家族を代表する者、社会福祉専門職等によって構成する関係者会議を設けるべきです。本法に基づく基本計画や全国展開される対策が総合的、計画的、効果的かつ効率的に推進されるための合意形成には必要不可欠のことと考えます。

4.ギャンブル等依存症により、貧困やDV・虐待・離婚などの家庭内問題、自殺や犯罪など多くの社会生活上の問題が起こり得ます。都道府県における相談窓口等の拡充のためには、ギャンブル等依存症及び関連問題を支援する資質を備えた社会福祉専門職の配置が必要不可欠です。

[PDF版はこちら(162KB)]

 ▲上へもどる

標題 障害福祉サービス等報酬改定に向けた要望書
日付 2017年5月25日
発翰
番号
JAPSW発第17-71号
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木一惠
提出先 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部 部長 堀江裕 様

 平素より本協会事業に格別のご理解、ご協力を賜り、深く感謝申しあげます。

 さて、厚生労働省では「我が事・丸ごと」の地域共生社会の実現に向けて、改革の背景と方向性を示され、当面の改革工程に基づき検討課題に取り組まれていることと存じます。間もなく開始される2018年度障害福祉サービス等報酬改定に向けた検討も、地域共生社会の実現を視野に入れて行われるものと承知しております。

 つきましては、この度の障害福祉サービス等報酬改定の検討に際して、本協会はソーシャルワーカーとして精神障害者の社会的復権を目指し、地域生活における相談支援を実践する専門職の立場から、下記の通り要望いたしますので、精神障害者もあたり前に暮らせる地域共生社会を実現するために、ご高配のほどよろしくお願いいたします。

1.指定障害福祉サービスに関すること
1)自立訓練(生活訓練)

○訪問による生活訓練サービス費の報酬単価の上乗せを検討してください。
○生活訓練サービス費(2)において、所要時間2時間以上の場合の報酬を新設してください。
【理由】通所サービスの利用に馴染めず、自宅に引きこもりがちになる精神障害者が多くいるため、訪問による自立訓練は、社会参加を促す一助となっています。きめ細やかな本支援に対して、適正に評価してください。また、2時間以上の場合の報酬の新設は、例えば、バスや電車の乗降等の訓練の実施が2時間未満では難しいことからも、訓練内容に照らして必要と考えます。

2)就労支援
○相談支援事業所においても、就労定着支援を実施できるようにしてください。その際の報酬は、地域移行支援サービス費に照らして、ひと月につき2,300点が適正と考えます。
【理由】現行では、就職し福祉サービスの利用が無くなると、就労定着をフォローできる関係機関が限られてしまいます。精神障害者が企業等に定着していくことは、本人にとっても、企業等にとっても重要な課題となります。相談支援事業所において就労定着支援を実施することは、大いなる見守りにつながると考えます。

○就労継続支援A型サービス費については、労務管理について評価し、「初期労務管理加算(仮称)」を新設してください。
【理由】就労継続支援A型はB型と違い労務管理業務に大きな労力を必要とします。特に利用初期においては、社会保険関連の書類の作成及び提出等B型にはない業務と経費が発生します。そのため、暫定支給決定によるアセスメントから個別支援計画作成までの基本的な関わりができていることを前提として、例えば「初期労務管理加算(仮称)」を新設して、雇用時の労務管理関連の業務を適正に評価することが必要と考えます。

○就労移行支援において2年間の標準利用期間を超えた場合でも、報酬単価を就労支援継続B型と同程度にして継続利用を可能にしてください。
【理由】一般就労を目指して2年間努力してきた利用者が、病状の悪化等により就労移行支援の利用開始から2年を経過する時期において就職活動ができなくなったものの、就労をあきらめられず、支援を受け続けたいという場合など、精神障害者の病状の波にも対応できる制度設計が必要と考えます。

○就労移行支援については、基本報酬の見直しも含め、より質の高い支援を行う体制を整備した事業所を評価するしくみに変えてください。
【理由】そもそも就労移行支援事業は、利用者に就労移行してもらうことが使命であり、基本報酬も他事業より高く設定されています。就労移行は本来の目的であり、就労移行にかかる加算を高く設定するのではなく、むしろ支援の質を担保する加算を評価していただきたいと思います。単に就労移行を評価するのでなく、フルタイム雇用につなげた人数を評価したり施設外支援の活用が多い事業所を評価したりするしくみを検討してください。

○就労定着支援体制加算を継続してください。
【理由】前回の改定で創設された就労定着支援体制加算は、6か月から36か月までの就労定着者に対する就労移行支援事業所による支援を評価するもので、きちんと支援したことが評価される大変意義のある改定でした。これによって、厚みのある支援を受けられた方は多かったと思います。そのため、就労定着支援に係るサービス費とは別に、就労移行支援事業において継続した支援を受けられるように、就労定着支援体制加算を継続してください。

3)共同生活援助
○重度対応型グループホームの設置を促進するためには、仕事量を適正に評価してください。また、重度の基準を現行の障害支援区分において3以上として設定してください。
【理由】「社会保障審議会障害者部会報告書」(2015年12月14日)においては、「障害者の地域移行の受け皿となるグループホームについて、重度障害者に対応することができる体制を備えた支援等を提供するサービスを位置付け、適切に評価を行うべきである」とされております。精神障害者の地域移行支援を進めるためには、重度対応型グループホームの利用は欠かせません。精神障害者の場合は、支援の必要量に比べて障害支援区分が低く出る傾向は続いており区分4以上になる方が少ないため、緩和措置が必要です。

○重度の精神障害者の対象者は、病状ではなく、生活のしづらさで判断してください。
【理由】重度の精神障害者とは、入院治療は必要ないとの判断があるものの、コミュニケーションを取る際に本人の特徴理解が必要な人、一定の幻覚妄想が残存し行動障害を伴う(妄想に左右されるなど病状による生活のしづらさがある)人と考えます。
 具体的には、以下のような生活のしづらさを持つ精神障害者を重度対応型グループホームの対象として想定する必要があります。
・長期入院による地域生活への不安がありこの不安や緊張から精神症状が揺れやすい特性がある人
・強いこだわりによる生活のしづらさがある人
・病状により判断に現実性が乏しく生活の力の見立てが支援者と大きく異なる人
・支援へのつながりにくさがある人
・これらにより地域生活の体験(チャレンジ)と生活技術や社会性の再獲得が必要な人
・暮らしの場において服薬・体調管理や金銭管理の頻回な支援や、不安による頻回な確認への十分な対応が必要な人
・身体合併症があり医療的ケアが必要な人

2.指定相談支援に関すること
1)地域相談支援(地域移行支援)について

○地域移行支援の利用を促進するため、地域移行支援に関する一定の研修を修了した精神保健福祉士を配置した事業所に、特定の加算をつけてください。
【理由】精神疾患により1年以上入院している患者は、約18.5万人いるとされていますが、地域移行支援の給付実績は500件前後で推移しているのが実情です。長期入院している患者の退院支援を促進するために、地域移行支援の一層の促進を期待します。そのために、地域移行支援に関する一定の研修を修了した精神保健福祉士を配置して地域移行支援に取り組んだ指定一般相談支援事業所に対して、特定の加算を設ける必要があると考えます。

2)地域相談支援(地域定着支援)
○地域定着支援の活用を促進するために、夜間帯のかけつけ支援、触法等の障害者に対する対応支援、電話やメールが頻回な方へ支援を加算の対象にしてください。
【理由】精神障害者が地域生活を安定して過ごすためには、見守り支援である地域定着支援の拡充が必要です。そのために緊急時支援費が設定されていますが、夜間の緊急時支援においては、少ないマンパワーで支援を行っている現状にあるため、さらなる加算が必要です。
 また、地域定着支援は医療観察法に基づく通院医療の利用者等も対象となりますが、宿泊型自立訓練・共同生活援助には地域生活移行個別支援特別加算があるように、医療観察法のケア会議に呼ばれる頻度や関係機関との連絡調整の多さ、本人や関係者の見守りをしていくために、地域定着支援にも同様の加算が必要です。
 さらに、精神障害の特性から、病状が不安定になっている場合や不安感が募っている場合は、一時的に電話やメール相談の回数が頻回になることもあるため、頻回に対応した際の集中支援加算を新設することが適切であると考えます。

3)計画相談支援
○現行で特別地域加算はありますが、移動距離に応じた加算を新たに検討してください。
【理由】山間部や過疎化が進んでいる地域においては、交通の利便性が悪く、訪問する際の移動距離が長く時間をたくさん必要とする場合が多くありますので、移動距離に応じた報酬の設定も必要と考えます。

○月に4回以上の対面支援をした場合の「集中支援加算」を新設してください。
【理由】モニタリングは、毎月や3か月、6か月などその方の状態に応じて頻度を調整し、その方との関係性を大切にしながら行っています。精神障害者の場合、毎月のモニタリングとしている場合であっても、その方の状況から月に複数回面接することもあります。このため、対面による支援を月4回以上実施した場合は、集中支援加算の算定できるようにすることが必要であると考えます。

○ピアサポーターが、自立生活援助、地域移行支援、就労定着支援など活躍する場を広げていくために、ピアサポーターを配置した事業所に対する一定の加算を要望します。加算の対象となるピアサポーターは、一定の養成研修の修了を必須とし、その養成研修は専門職も一緒に受講することを要望します。
【理由】ピアサポーターの活躍や実践は全国各地で行われていますが、その養成のための研修カリキュラム、活動の場及び報酬に係る補助等は都道府県ごとに異なり、「精神障害者地域移行支援・地域定着支援事業」に限ってみても全国一律の基準はなく、位置づけが不明瞭です。
 このような現状の中では、ピアサポーターの雇用は難しく、ピアサポーターによる支援を必要としている人に安定したサービスを提供することができません。地域移行等に携わるピアサポーターの資格要件に、一定の研修受講を明記することで、地域移行支援チームの一員として、他の専門職と対等に活躍することが期待できると考えます。
 また、2018年度から始まる、自立生活援助、就労定着支援などへのピアの活躍の場が広がることも期待されます。

[PDF版はこちら(347KB)]

 ▲上へもどる

標題 改正障害者総合支援法の施行に向けた要望書
日付 2017年5月25日
発翰
番号
JAPSW発第17-70号
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木一惠
提出先 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部 部長 堀江裕 様

  平素より本協会事業に格別のご理解、ご協力を賜り、深く感謝申しあげます。

 さて、厚生労働省では「我が事・丸ごと」の地域共生社会の実現に向けて、改革の背景と方向性を示され、当面の改革工程に基づき検討課題に取り組まれていることと存じます。現在2016年に改正となった障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(以下「改正障害者総合支援法」という。)の施行に向けた準備も、地域共生社会の実現を視野に入れて行われるものと承知しております。

 つきましては、2018年4月の改正障害者総合支援法の施行に向けて、本協会はソーシャルワーカーとして精神障害者の社会的復権を目指し、地域生活における相談支援を実践する専門職の立場から、下記の通り要望いたしますので、精神障害者もあたり前に暮らせる地域共生社会を実現するために、ご高配のほどよろしくお願いいたします。


1.就労支援に関すること

○利用者自己負担のない制度にしてください。
【理由】利用者の中には、一割の自己負担が発生するため、自ら利用日数を減らす方もおられます。自己負担のある就労系事業所の利用者は、働いているのに利用料を払うため、自己負担のない利用者と比べ、大きな不公平感を感じています。公平なサービス利用を受ける権利を考えると一律自己負担のない制度にすることを求めます。

○就労継続支援B型については、B型アセスメントを希望者のみの実施としてください。
【理由】働けるかどうかを事前にアセスメントされてからでなければ利用ができないしくみは、あたかも1722年に英国で実施されたワークハウス・テスト法を彷彿とさせます。一般企業では働けないという烙印を押されて初めて就労継続支援B型の利用を許されるというしくみは、屈辱的であり人権侵害にもあたると考えます。
 またサービス等利用計画と合わせ、このアセスメントの実施によって、B型利用希望者はその正式利用までに1~2か月を要します。その間にモチベーションの低下や生活リズムや病状の悪化などを起こす方もおられます。ようやく福祉的就労の入り口まできた方にとっては不必要に利用を待たされるものであり、この制度は廃止してください。

2.指定相談支援に関すること
1)地域相談支援(地域移行支援)
○精神科に長期入院している住民の現状の把握をするために、各地方自治体別で1年以上の入院患者数と、その内65歳以上の人数を明らかにし各地方自治体に公表してください。
【理由】各地方自治体は、長期入院患者の地域移行について、何が地域課題になっているのかが分かりにくい状況です。
 第5期市町村障害福祉計画の「入院中の精神障害者の地域生活への移行」について効果的な基盤整備量を設定するためにも、長期入院患者数を各地方自治体が把握して、目標数値に対する進行状況の確認と手立てができるようにしてください。また、各地方自治体が住民の長期入院患者数のうち高齢者の人数を把握することで、高齢分野との共通の課題として自立支援協議会や地域ケア会議での協議が可能になります。入院中ということで住民の支援を病院だけにお任せするのではなく、地方自治体として入院中の住民にアプローチする根拠としてください。

○都道府県に対しては、指定一般事業所の実態の把握、指導の強化を義務付けてください。
【理由】地域相談支援の給付数は、制度が開始された2012年度から4年経過した現在も、国が想定していた給付数の20%にも満たない低調な状況が続いています。指定一般相談支援事業所は都道府県が指定するが、実態として特に指導は行われておらず、自らの都道府県の各圏域において機能する指定一般相談支援事業所の設置数やその支援の中身の質といったことは把握し切れていないのが実情となっています。
 指定一般相談支援事業所も更新制にする、指定は受けたが人員等にて実際には依頼を断っているといった事業所に対して都道府県が指導する、または指定を取り消すといったことも検討が必要です。中身のある指定一般相談支援事業所が圏域にどれぐらいあるのかという実態を都道府県が把握したうえで質の向上に向けた技術的な支援や体制整備を考えていく必要があります。

○措置入院者及び医療保護入院者については、入院期間にかかわらず地域移行支援の対象者としてください。
【理由】地域移行支援は、精神科病院に入院している精神障害者である場合において、直近の入院期間が1年以上の入院者を中心に、1年未満の入院者であっても、例えば、措置入院や医療保護入院から退院する者で住居の確保などの支援を必要とするものや地域移行支援を行わなければ入院の長期化が見込まれる者については対象とすることができるとしています。
 入院中及び退院後に本人の望む生活を実現するためには入院中からの関わりが効果的であることから、措置入院者及び医療保護入院者については、入院期間にかかわらず地域移行支援の対象者としてください。

2)計画相談支援
○主任相談支援専門員は、精神保健福祉士の資格を有し、OJTやスーパーバイズをするスキルを有し、市町村の自立支援協議会への貢献する人材を求めます。そのような「主任相談支援専門員(仮称)」を配置した事業所に、配置加算を新設してください。
【理由】「相談支援の質の向上に向けた検討会における議論のとりまとめ」においても記載されているように、「主任相談支援専門員(仮称)」は、事業所や地域において指導的役割を担う者であって、相談支援の仕組みを支える中核的な人材と位置付けるべきです。そのためには、精神保健福祉士等の国家資格を有していることを条件としてください。また、期待される役割を十分に果たすために、その活動の責任エリアの提示、所属する自らの法人や機関ではなく、責任エリア全体の人材育成を担うこと、地域で機能するために名誉職ではないことを示すためにも実務経験を必須とし、更新制にするなどの基準の設置が必要だと考えます。

○市町村の責務である委託相談は、市町村の裁量に任されているのが現状ですが、相談支援の質の担保のためには、委託相談は重要です。全市町村で、委託相談支援事業所を設置する義務を明文化してください。
【理由】全国3,299の指定一般相談支援事業所のうち、市町村から委託を受けているのは1,407事業所と全体の43%に留まっている中(2015年4月時点)、移動の時間や距離、マンパワー不足を理由に相談支援を受けていない指定特定・指定一般相談支援事業所も多いのが実情です。長期入院患者への退院支援の意欲喚起や、福祉サービス利用につながっていない方などは、委託相談によって地域生活が過ごせるような仕組みが必要です。そのためには、全市町村で委託相談支援事業所を設置し、基本相談が具体的に行われるよう求めます。

[PDF版はこちら(230KB)]

 ▲上へもどる

標題 生活保護受給者におけるぱちんこ等の状況等調査に関する意見
日付 2017年5月16日
発翰
番号
JAPSW発第17-52号
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木一惠
提出先 厚生労働大臣 塩崎恭久 様

 2017年3月3日付の事務連絡「生活保護受給者におけるぱちんこ等の状況の把握について(依頼)」に基づいて実施された「生活保護受給者のぱちんこ等の状況等調査」に関して、調査を実施することとなった経緯自体に甚だの疑義を覚えるとともに、本協会としての意見を下記の通り申しあげます。

1.調査実施が生活保護受給者への偏見の助長につながることを危惧します。

 生活保護法に基づいて支給される扶助費を含め被保護世帯の収入の使途は、基本的に当該世帯の自由とされています。

 今回の状況等調査における調査項目が、保護費の使途としてぱちんこ等に使われたことに対する指導件数やぱちんこ等で得た収入の未申告による不正受給といった項目に限定されていることは、あたかも保護受給者がギャンブルに保護費を浪費しているとの印象を社会に与えかねず、生活保護バッシングを助長する危険性があると考えます。また、事務連絡にもありますように現行法上は、娯楽とされているぱちんこ等の状況等を調査することは、保護費の使途に対する監視を強めることにつながると危惧します。

 したがって、今後調査結果を公表する場合には、特段の配慮が必要であると考えます。


2.調査の回答様式にあるギャンブル依存の疑いのあるケースの事例が不適切と考えます。

 特に事項1及び事項4の事例は、ケースワークの観点やギャンブル依存への対応として不適切と考えます。依存及び依存症に陥っている受給者に対して、就労指導や口頭指導(どのような口頭指導を行ったかについては言及がない)を行うことでは、依存及び依存症の回復や解決にはつながりません。こうした事例を例示することは、現場のケースワーカーの方々にギャンブル問題に関する不適切な指導を蔓延させることにもつながりかねません。

 本来、ケースワーカーの役割は、被保護者の生活状況を困難にしているギャンブル問題への初期介入として適切な医療につなぐことの助言指導や、日常生活の中での回復を確かなものとするための福祉的支援を行うことにあります。時宜に叶う介入のないままに、就労を急がせることや濫費の非を責めるような指導は、かえって依存症の悪化や重症化を招くことになります。現場のケースワーカーを対象とした依存症に関する研修等の実施こそが急務の課題であると考えます。

以上

 なお、本来はギャンブルであるぱちんこや競馬等を「娯楽」として広く普及させていることが、ギャンブル依存症を蔓延させる大きな要因となっていることは論を待たないところでありますが、一方において、薬物関連問題及び依存症の例に見るように、法的な規制強化のみでは根本的な問題解決とならないこととも併せて、この問題については、別の機会に改めて意見表明をする所存です。


[PDF版はこちら(104KB)]

(参考)各都道府県等生活保護担当係長宛事務連絡「生活保護受給者におけるぱちんこ等の状況の把握について〈依頼〉」(厚生労働省社会・援護局保護課保護係長/平成29年3月9日付)
 ▲上へもどる

標題 「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律案」の審議経過に関する見解
日付 2017年4月17日
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木一惠

 本年2月28日に閣議決定され、現在、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(以下「精神保健福祉法」という。)の一部を改正する法律案(以下「改正法案」という。)が国会で審議されています。この一連の経過に鑑み、現段階での本協会の見解を下記の通り表明します。

1.法改正の趣旨及び措置入院制度の見直しについて

 本協会は、かねてより、精神保健福祉法における措置入院制度の見直しについて、相模原市の障害者支援施設における事件と切り離して協議検討するよう要望してきました。この度、政府が審議過程において、改正法案概要の「改正の趣旨」から相模原事件の再発防止を法改正の目的であると誤解させるような表現を削除したことにつき、遅すぎた感は否めないものの本協会としては肯定的に受け止めています。報道過程を通じて形成される歪んだ社会的認知のままに、法改正に至った過去の過ちを繰り返さぬよう、国会審議中にあって食い止めた姿勢は評価したいと思います。

 また、クライエントの自己決定の尊重を専門職アイデンティティとして重視する本協会の意見が汲み入れられ、個別ケース検討会議における本人の参加が明記されたことも妥当な判断と考えます。

 なお、今回の法改正に関しては、2013年改正時における3年後の検討規定に基づき、厚生労働省に設置された「これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会」において、1年間に渡って協議されていました。改正法案では、2013年改正以前に指摘されていた措置入院制度における保健所の機能強化をはじめとして、措置指定病院における医療と支援の質の向上、指定医制度の見直しが盛り込まれました。長年未着手であった強制入院制度としての措置入院制度の見直しは、本協会がこれまで要望してきたことでもあります。

 今後、政府はこれらの改正事項の運用における措置入院の実態把握と評価を行い、権利擁護機能の強化を含めさらなる改正を行うことが望まれます。


2.非自発的入院のあり方に関する継続的な検討について

 非自発的入院に対する権利擁護機能の体制が構築されていない現段階において、医療保護入院制度の存続や市町村長同意の要件緩和は、歴史的課題の積み残しとして改正法案が抱える重大な課題であると考えます。

 本協会は、これまでにも意思決定支援の仕組みや非自発的入院における行政責任の明確化を求めてきました。今回の法案ではこうした点に関する改正提案が為されなかったことから、改めて厚生労働省に検討会を設置し、3年以内の見直しに向けて協議を継続することが妥当であると考えます。その際、2016年度より実施されている精神医療審査会の機能強化の実態についても、その成果と妥当性を評価することが求められます。

 こうした見直しの必要性に関する認識が有名無実化しないよう、今国会における法案の採決にあたり、附帯決議を付すことが適当であると考えます。


3.精神保健福祉法の意義の再検討について

 精神障害のある人々の地域生活支援は、地域包括ケアシステムの中で一体的に行われることが望ましいと考えます。障害福祉に関する事項は既に障害者総合支援法に一元化されており、精神保健福祉法の「福祉」に関する再整理が必要です。

 政府が、相模原事件の再発防止を法改正の趣旨から削除したことは、精神病者監護法から精神衛生法の改正等々と連綿と続く、社会防衛策としてのこの法の成り立ちそのものを見直す覚悟の表れであると認識し、精神科医療をその他の医療から切り離して規定する現行の精神保健福祉法の抜本的見直しの端緒に立つことを示すものと考えます。

 非自発的入院制度の存置の是非についてさらなる検討を重ね、国際連合の「精神疾患を有する者の保護及びメンタルヘルスケアの改善のための諸原則」や「障害者の権利に関する条約」に適った入院制度の創設へと歩を止めることがないよう求めるとともに、本協会も諸活動を展開します。


[PDF版はこちら(182KB)]
 ▲上へもどる

△トップページへもどる