要望書・見解等

2016年度


標題 精神保健福祉法の改正に関する意見書
日付 2017年2月14日
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木一惠
提出先 自由民主党 政務調査会
厚生労働部会障害福祉委員長 とかしきなおみ 様
障害児者問題調査会長 衛藤晟一 様

 精神保健福祉法の改正にあたり、精神障害のある人々の社会的復権と福祉のための専門的・社会的活動を行う立場から、下記の通り、意見を申しあげます。

1.措置入院者が退院後に医療等の継続的な支援を確実に受けられる仕組みの整備について

1)精神障害のある人々の支援は、今後、地域包括ケアシステムの中で一体的に行われていくことが求められます。今後、地域共生社会の実現を図るのであれば、措置入院者の退院後の支援に限定した特別な制度を作るのではなく、複合的な支援ニーズを有する精神障害のある人々に対する地域精神保健医療福祉体制の構築を図る必要があると考えます。

2)措置入院先病院の管理者が選任する退院後生活環境相談員については、精神保健福祉士が担うことを原則として、病院内多職種支援チームのコーディネートと保健所や地域援助事業者との連携を図るべきです。また、退院後生活環境相談員(精神保健福祉士)を含めた多職種支援チームの資質向上を目的として所定の研修受講を必須とするべきです。

3)保健所については、地域保健法制定から20年が経過する中で都道府県等における組織再編が進んでいます(2016年4月1日現在485か所)。また、2000年度末には1,812人いた保健所の精神保健福祉相談員(常勤)は、2014年度末には1,072人と減少しています(減少率約40%)。2014年度においては、490か所の保健所のうち231か所が精神保健福祉相談員を置いておらず、264か所が精神保健福祉士を置いていない状況にあります(いずれも置かない保健所は159か所)(平成26年度地域保健・健康増進事業報告)。
 このような中で精神保健福祉に関する専門性が求められる新たな業務に対応することは困難であり、全保健所への精神保健福祉相談員の配置を進める必要があります(精神保健福祉法の現在の規定は、「置くことができる」規定)。[資料参照]※PDF版に掲載


2.医療保護入院の入院手続等の見直しについて

 精神障害のある人々に対する非自発的入院制度は、適切な医療提供が目的であるにしても人身の自由を拘束するものであり、その適用は必要最小限に止めることが本来のあるべき姿ですが、わが国では入院治療へのアクセスが優先される傾向が続いています。

 今回の法改正では十分な整理が間に合わず、入院時の家族等の同意を要件とする医療保護入院制度は大きな見直しが行われないこととなりますが、引き続き非自発的入院制度である措置入院と医療保護入院の抜本的な見直しと入院中の権利擁護のあり方について検討していくべきです。

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標題 措置入院制度等の見直しに関する要望書
日付 2016年12月22日
発翰
番号
JAPSW発第16-285号
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木一惠
提出先 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部 部長 堀江裕 様
これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会 座長 樋口輝彦 様

 平素より本協会事業に格別のご理解、ご協力を賜り、深く感謝申しあげます。

 さて、本年12月8日に「相模原市の障害者支援施設における事件の検証及び再発防止策検討チーム」の報告書が公表されました。

 本協会といたしましては、容疑者の措置入院歴と今回の事件との因果関係が明らかにされていない中で、措置入院制度等の見直しをもって同様の事件の再発防止策としていることが、精神障害者に対する偏った認識と保安的な思想形成の助長につながることを強く危惧しております。

 本協会は、先に提出した「措置入院制度の見直しに関する要望書」(2016年11月9日付JAPSW発第16-261号)において、措置入院制度を含めた強制入院制度の抜本的な見直しに向けた検討の場の設置と、措置入院制度において早急に見直しすべき課題の本検討会における検討を要望したところですが、改めて下記の通り具体的な見直しについて要望いたします。

第1 全国共通のガイドラインの導入により措置入院の運用格差を是正し、均てん化を図ってください。

 措置入院制度の運用は、都道府県及び指定都市(以下「都道府県等」という。)に委ねられており、通報等の受理から措置診察の実施及び措置解除の手続きに至るまでの都道府県等の対応と入院先の精神科病院の支援内容に格差を生じさせる結果を招いております。
今後は、国が法律事項も含め以下の内容を盛り込んだ実施要綱を制定し、全国共通のガイドラインとして措置入院制度の運用を厳格化させる必要があると考えます。

1.警察官通報等から措置入院に至るまで入口段階での地域格差を解消してください。
 2015年衛生行政報告例から試算したところ、都道府県等における1)人口10万対警察官通報件数は1.9件から59.7件まで約30倍の格差、2)警察官通報に対して診察の必要がないと認めた者の割合は0.9%から98.4%まで約100倍の格差、3)人口10万対措置入院件数は0.3件から11.4件まで約40倍の格差、がそれぞれ認められます。

2.措置入院患者等による退院請求等の審査を速やかに行ってください。
 入院患者等による退院請求や処遇改善請求については、現在、請求の受理から審査結果通知までに1か月程度を要しています。特に措置入院は人身の自由を著しく制限する制度であり、人権擁護の観点から退院請求等に関する審査については、速やかに(例えば請求受理から72時間以内)行われるように、精神医療審査会運営マニュアルの見直しと審査体制の整備を図る必要があります。
注釈
 退院請求及び処遇改善請求の受理から審査結果通知までの平均日数は約1か月で推移しています(資料:厚生労働科学研究費補助金「精神保健医療福祉体系の改革に関する研究」〔平成23年度〕、厚生労働科学研究費補助金「新たな地域精神保健医療体制の構築のための実態把握及び活動の評価等に関する研究」〔平成24年度~平成26年度〕、厚生労働科学研究費補助金「地域のストレングスを活かした精神保険医療改革プロセスの明確化に関する研究」〔平成27年度〕)。
 一方、精神・障害保健課調べによると、措置入院患者の平均在院期間の推計は2013年6月30日において87.5日であり、在院期間が1か月未満の患者が33.7%を占めていることから、措置入院患者等による退院請求等に関して、措置解除後に審査結果を通知しているケースがあることが推測されます。


3.ガイドラインに沿った措置入院中のクリティカルパスを導入してください。
 1)措置入院者の定期病状報告は原則1か月ごとに変更すること、2)精神科病院と都道府県等が共同で開催するケア会議(退院支援委員会)において措置入院の継続の必要性等を検討し、その内容を報告書に記載すること、3)措置入院者の症状消退についても指定医を中心として他職種により判断すること等を全国共通のガイドラインとして示すとともに、措置入院の入口段階から措置解除まで、都道府県等や精神科病院が遵守すべき事項を盛り込んだクリティカルパスを作成することが必要と考えます。
注釈
 精神保健福祉法第二十九条の四において、都道府県知事は、措置解除の前に予め、その者を入院させている精神科病院又は指定病院の管理者に意見を聞くものとするとされており、必ずしも精神科病院の判断によらず、措置の継続及び解除ができると解釈されています。
 今後は、都道府県知事による措置の継続や解除の判断を明確にする観点から、精神科病院で開催するケア会議への都道府県等の職員の参加等による適切な実態把握が求められると考えます。


4.都道府県及び市区町村に精神保健福祉士を配置してください。
 精神保健福祉法第48条に定める精神保健福祉相談員については、一定の経験を有する精神保健福祉士を任用することを原則として、各都道府県及び市区町村において偏在なく配置するように義務付けてください。また、措置入院中の精神保健福祉相談員の支援内容や措置解除に向けた関与の方法については、全国共通のガイドラインの運用と連動させて検討してください。

5.措置入院患者に対する退院後生活環境相談員の選任を義務付けてください。
 現行の医療保護入院制度に倣い、一定の経験を有する精神保健福祉士を退院後生活環境相談員として選任するように要望いたします。この退院後生活環境相談員は、措置入院患者に対する多職種支援チームのコーディネートを担い、行政関係者とも連携する役割として、措置入院患者1人につき1人を選任することを義務付けてください。
注釈
 「医療保護入院者の退院促進に関する措置について」(平成26年1月24日 障発〇一二四第二号厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知)では、医療保護入院における退院後生活環境相談員の選任手続きや配置基準等が示されています。


6.精神科病院の従事者に対して全国統一で措置入院制度に係る研修を義務付けてください。
 措置入院を受け入れる都道府県病院等及び指定病院においては、措置入院患者に対して、精神保健指定医、看護師、作業療法士、精神保健福祉士及び臨床心理技術者等が多職種協働で支援に関与することを原則としてください。そのうえで、措置入院患者が全国どこでも標準的な医療や支援を受けられるためにも、都道府県病院等及び指定病院の職員に、措置入院制度に係る研修の受講を義務付けてください。また、都道府県等の精神保健福祉相談員が同一の研修を受講することについても検討してください。
注釈
 厚生労働省が委託実施している司法精神医療等人材養成研修(指定医療機関従事者研修)においては、心神喪失等医療観察制度に従事する全国の指定入院医療機関及び指定通院医療機関の多職種が共通の研修を受講しています。
 また、精神保健判定医等養成研修会においては、判定医候補者である精神保健指定医と参与員候補者である実務経験5年以上の精神保健福祉士の養成を同一に行っています。


7.診療報酬の見直し等による財源の確保を図ってください。
 措置入院の受け入れに伴い、入院の初日のみに算定が限定されている精神科措置入院診療加算は、措置入院中に限り継続して算定できるように要望いたします。
注釈
 心神喪失者等医療観察制度の指定入院医療機関における医療費を定めた医療観察診療報酬点数では、入院対象者入院医学管理料として、治療ステージに応じた1日あたりの報酬点数が設定されています(4,938点~6,705点)。
 措置入院を受け入れる精神科病院においても、多職種協働による医療・支援の提供を原則として、支援内容を標準化するために必要な措置であると考えます。


  第2 地域精神保健医療福祉体制の充実を図る中で、措置入院歴の有無ではなく必要に応じて包括的な支援が提供される仕組みを構築してください。

 精神障害のある人々の支援は、今後、地域包括ケアシステムの中で一体的に行われていくことが求められます。国が示す「新たな時代に対応した福祉の提供ビジョン」にあるように、全世代・全対象型の地域包括支援体制を推進するのであれば、措置入院者の退院後の支援に限定した特別な制度を作るのではなく、複合的な支援を必要とする人々に対する地域精神保健医療福祉体制の構築を図る必要があります。
 このためには、地域における精神保健行政の第一線機関として位置付けられている保健所を一義的な責任主体としつつ、市町村における相談支援体制の充実強化や医療機関等による必要な医療的支援の提供と相俟って、保健・医療・福祉が包括的に提供される仕組みを構築する必要があります。
 加えて、精神障害のある人々の支援は、信頼関係を基本として本人の意思確認のうえで行われるべきものであり、自治体間等における情報共有のあり方は極めて慎重を期す必要があります。

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標題 「相模原市の障害者支援施設における事件の検証及び再発防止策検討チーム」報告書に対する見解
日付 2016年12月14日
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木一惠

 このたび、厚生労働省に設置されていた「相模原市の障害者施設における事件の検証及び再発防止策検討チーム(以下「検討チーム」という。)」による報告書が提出されました。8月10日の第1回会議以来、事件の再発防止のために真摯な検討を重ねてこられた委員各位の尽力には敬意を表します。

 一方で、この報告書によって、措置入院制度の運用の詳細な定めが、殺傷事件の再発防止にとって有効であると結論づけられたことが明白となりました。精神保健福祉法における措置入院制度には不十分な点が多く、改正が望まれることには言を俟たないでしょう。

 しかし、事件の発生と被疑者の措置入院歴の因果関係さえ不明な時点で、事件の再発防止と関連づけて措置入院制度の運用にのみ具体的な提案が詳細になされていることは、検討チームの成り立ち自体に翻って、政府の意図を感じさせられます。

 こうした観点に立って、以下に報告書の提言に対する本協会の見解を述べます。

  1.共生社会の推進について
○ 被疑者の有する障害者への偏見や差別意識に対峙するものとして、「命の重さは障害のあるなしによって少しも変わることはない、という当たり前の価値観を社会全体で共有する」ことの重要性を述べている点には本協会も賛同しますが、措置入院制度の記述と比べ、具体的な提案に乏しい印象は拭えません。

○ 私たちは、近年の社会保障給付費の抑制や、あらゆる領域で効率性・生産性を重視する風潮が、障害等により経済的な自立に困難を抱える人々への蔑視を助長させていると考えています。報告書は、こうした社会情勢や時代背景への言及がないまま理念的な表現に終始しており、「共生社会の推進」の実効性に乏しいといわざるを得ません。

○ 共生社会とは、この国に生きる誰もがお互いに人格と個性を尊重し支え合い、人としての尊厳が守られる社会であり、多様な価値観や生活上の困難を持つ人々も含めて、共に生きることの責任と覚悟をその社会を構成するすべての人々が受容できる社会だと考えます。そこでは、精神に障害のある方々も一市民として迎えられなくてはなりません。報告書では、措置入院歴のある方を特別な支援の必要な障害者として選り分け、行政責任において計画的な「支援」を提供することが提案されています。これは、新たな時代に対応した福祉の提供ビジョン等で謳われている地域共生社会の推進とは矛盾した方策であると考えます。

  2.福祉施設のあり方について

○ 津久井やまゆり園では、事件前すでに多数の利用者が長期にわたって自宅や家族から遠く離れて生活していました。このような実態が同園のみに特異なものではないことに鑑みると、共生社会の推進においては、入所施設からの地域移行及びその後の地域生活支援体制の充実が急務であることや、そのための予算措置を含む具体的方策について言及すべきだったと考えます。

○ 福祉施設における安全や防犯対策が万全であることは、事件の再発防止とは別次元で語られるべきです。今回のような事件の再発防止のために、福祉施設だけが防犯対策を強めなければならないとしたら、それは障害のある方々が標的になりやすいことを是認するようなもので、結果的に差別や偏見を助長することにつながりかねません。

○ 本協会が検討チームにおけるヒアリングで指摘したような福祉人材の確保や待遇改善、養成教育のための具体的な見直し策が示されておらず、福祉施設側のみにその対応を求めても実現性に乏しいと考えます。

  3.措置入院制度に対する具体的な記述について

○ 措置入院制度の見直しについては、改めて「これからの地域精神保健医療のあり方に関する検討会」の場で、他の入院制度や地域生活支援体制の整備と一体的に検討されることを要望します。その際、措置入院歴を有する者の人権に配慮し、その意思を尊重した支援が提供される仕組みの構築を求めます。

○ 報告書では、「今回の事件は極めて特異なものである」と述べていながら、全ての措置入院患者の(医療保護入院や任意入院を経た後も含む)退院後の地域社会での孤立防止と事件の再発防止のために、行政責任において継続的な支援を行うよう提案している点には矛盾があります。

○ 措置入院患者の退院後の行政責任による計画的な支援は、居住先が移転しても一定期間に渡り切れ目なく行われる仕組みの構築が提案されています。これは、措置症状(自傷他害のおそれ)が消退しても、後々まで患者を追跡する方策に近いものであり、支援という名の「監視」を想起させることから、本協会は本人の意思に基づかないこのような医療や福祉の拡大流用に反対します。

○ 措置入院制度の運用実態に関する調査が行われ、都道府県格差が明らかになっているにも関わらず、退院後の支援の全体調整を自治体に委ね、さらにそれを民間にも委託できるという提案については、調査結果の分析が不十分であると言わざるを得ません。

○ 措置診断の現場では、「他害のおそれが精神障害によるものか判断が難しい事例」があることに言及しながらも、こうした事例への警察の関与のあり方を検討した経緯は読み取れません。検討チームが厚労省に設置されたことの限界がここに露呈していると思われます。

  まとめ

 改めて、事件の被害に遭われたすべての方々に心よりお見舞い申しあげます。また、今も深い悲しみや衝撃の中にいらっしゃる方々の一日も早いご回復をお祈りいたします。

 この報告書全体にわたり、措置入院制度に関連する部分以外の再発防止策には抽象的な表現が多く、検討チームの構成や検証・検討すべき課題設定が必要十分なものだったのかどうか疑問が残ります。今後、事件と被疑者の精神疾患との因果関係がない、又は乏しいことが判明した場合には再度検証される必要があります。その際には、精神障害者の地域生活支援や精神科医療機関における支援の実務に携わる精神保健福祉士等の参画が欠かせないと考えます。

 本事件は、精神科医療及び保健福祉の利用者と関係者に対しても大きな影響を与えました。過去において、ライシャワー事件、宇都宮病院事件、池田小学校事件などの不幸な出来事を契機としてわが国の精神科医療施策が見直されてきた歴史に鑑みるとき、精神科医療の負わされている任の重さを痛感させられます。

 しかし、医療や福祉は第一義的に、それを利用する本人の幸福を実現するためにあるべきです。本協会は、長年に渡って差別や偏見の対象とされてきた精神障害者の社会的復権と福祉のための専門的・社会的活動を行うことを通して、誰もが等しく尊重され、自分の意思に基づく生活を主体的に選択できる社会の実現に向けて尽力することを改めて言明いたします。

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標題 措置入院制度の見直しに関する要望書
日付 2016年11月9日
発翰
番号
JAPSW発第16-261号
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木一惠
提出先 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部 部長 堀江裕 様
これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会 座長 樋口輝彦 様

 平素より本協会事業に格別のご理解、ご協力を賜り、深く感謝申しあげます。

 さて、現在開催されている「これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会」では、医療保護入院等のあり方と新たな地域精神保健医療体制のあり方が検討課題とされているところです。

 本年7月に発生した相模原市障害者施設における殺傷事件を受けて貴省に設置された「検証及び再発防止検討チーム」では、被疑者が過去に措置入院歴を有することから、措置入院制度のあり方が協議されていると認識しております。一方、2013年の精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(以下「精神保健福祉法」という。)の一部改正においては、保護者制度と医療保護入院の見直しが行われたものの、同じく強制入院制度に位置づけられる措置入院制度については改正されることなく現在に至っております。

 そこで、本協会として改めて措置入院制度等に関して、下記の通り要望いたします。

1.措置入院制度を含めた強制入院制度の抜本的な見直しに向けた検討の場を設置してください。

 障害者権利条約を批准したわが国において、精神障害者の強制入院制度については本人の権利擁護の観点から抜本的な見直しをする必要があります。

 本協会も含めて関係する団体が主張するように、精神医療は社会防衛機能を持ち得ないことは論を待ちません。しかしながら、措置入院制度が実態として一部で保安的な機能を期待されている側面を持つこと、措置入院における診断基準、診察の実施体制、「自傷他害のおそれ」の判断や入院決定プロセス等において見直すべき課題が厳然としてあります。

 そのため、改めて精神保健福祉法に基づく措置入院、医療保護入院、及び心神喪失者等医療観察法に基づく入院について、そのあり方を抜本的に見直すための実態把握と検討の場が必要と考えます。また検討会は、精神医療、保健福祉、警察、司法等の有識者と精神障害のある人で構成されるべきと考えます。


2.措置入院制度において早急に見直しすべき課題を、本検討会において検討してください。

 強制入院制度の抜本的な見直しには相当な時間を要します。そのため、当面は今回の医療保護入院等の見直しに合わせて、措置入院制度についても次の点について本検討会の検討課題として取り上げてください。

1)措置入院が全国で統一的に運用されるようにしてください。
 現状では、精神保健指定医や都道府県から指定を受けて措置入院を講じる精神科医療機関(以下「指定病院」という。)の確保の仕方、措置診察の手順、措置解除時の関与など、運用面での自治体間格差が目立ちます。
また、措置診察を担う精神保健指定医と入院受け入れ病院との関係性に考慮し、診察における公平、中立性をはかる必要があります。

2)指定病院の基準見直しと報酬設定が必要です。
 措置入院患者に対して十分に人権に配慮しつつ適切な精神科医療と福祉相談を提供するために、人員配置基準の厳格化が必要です。
また、指定病院において必要な人員を配置するための診療報酬の裏付けが必要です。現行の「精神科救急入院料」では措置入院受け入れ件数が規定されており、このことが要措置判断に与える影響を懸念するところです。

3)措置入院中の患者の医療、福祉的支援を提供するため、措置入院運用ガイドラインや措置入院クリティカルパスを制定する必要があります。
 現行の医療保護入院における退院促進の仕組みを参考に、同様の仕組みを措置入院にも適用してください。また、退院時に適切な支援に結び付けていくためには、入院中から行政が関与する仕組みとすることが必要です。
 また、措置入院に関わる全職員を対象とした研修を全国統一の内容で実施し、受講を義務付けることも必要です。

 以上、制度見直しに関する本協会の短・長期的な要望といたしますが、最も重要なことは地域精神保健の充実であり、精神障害者が地域から排除されることのない地域包括ケアシステムの構築が、強制入院の最小化にも寄与することと考えます。

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標題 「医療基本法」制定の実現を望んで
日付 2016年11月5日
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 副会長 洗 成子
提出先 医療基本法実現にむけてのシンポジウム「みんなで動こう医療基本法Ⅱ(さらなる集い)/リレートーク

 私たち精神保健福祉士は専門職者として国家資格化される以前から、精神科医療の現場において、精神疾患を患い障害を抱え苦しむ方々が適切な医療を享受し社会的復権を果たせるよう支援していくことを私たちの使命としてきました。日本において本格的に医療基本法を議論する発端の一つとなった「ハンセン病問題」と同様に、精神科医療もまた「隔離治療」という特性が抱える闇と向き合い続けています。もちろん精神科患者の権利擁護に向けて度重なる法改正が成されてきてはいますが、日本の精神科医療はともすると健康を回復するという本来の目的から外れ、患者の人権を脅かすという厳しい現実を負っており、その結果、過去において何十万人もの「社会的入院者」という犠牲を生み、それは残念ながら今もって解消されてはいません。こうした精神科医療の深刻な課題は単に精神科患者やその家族の上だけに降りかかる問題ではなく、メンタルヘルス領域のアクシデントはいつ誰にでも起こりうることであり誰もが精神科ユーザーと成り得ることや海外から日本は人権意識の低い国であると評価されることなどを考え合わせると、広く国民全体にとっての悲劇であると言えます。また、精神科医師をはじめとする医療従事者側も「精神科特例」という足かせにより、精神科以外の診療科目の3分の1の人員で医療を提供することを強いられ、質の高い医療を追求したくても十分に果たしえない現実と闘ってきています。

 このように今の精神科医療は構造的に患者と医療者の間に溝を生じさせる課題を十分に解決できずにいます。そこで私たち精神保健福祉士としては、医療の個別法等と憲法(第25条「生存権」や第13条「幸福追求権」等)との間を媒介する親法としての位置づけを想定している医療基本法が制定され、精神科医療における抜本的な課題解決の根拠として機能していくことを望みます。

 医療者と患者の信頼関係の構築を目指し、なおかつWHO憲章の定義である「身体的」、「精神的」のみならず「社会的」という「三要素すべてが揃って良好であること」を医療基本法の考え方の基盤として提言されている共同骨子に大いに賛成いたします。チーム医療の中には医療の専門職だけでなく社会福祉の専門職も参入できてこそ、国民の健康は維持されるものと考えます。
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標題 相模原市の障害者支援施設における事件の検証及び再発防止策検討に関する意見
日付 2016年10月31日
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木一惠
提出先 厚生労働省 相模原市の障害者支援施設における事件の検証及び再発防止策検討チーム(第7回)

 「相模原市の障害者支援施設における事件の検証及び再発防止策検討チーム」(以下、「検証・検討チーム」)におけるヒアリングに際して、精神障害者の社会的復権と福祉の向上に取り組む専門職能団体である本協会として意見を述べます。

1.幅広い見地から事件を検証し再発防止策を検討すべきです。
 事件発生後の早い段階で厚生労働省内に本検証・検討チームが設置されたこと、措置入院制度の見直しが既定のことかのように議論が進められていることに、違和感と危機感を強く覚えます。
 類似事件の再発防止ために最も重要なのは、「生きるに値する命」と「そうでない命」を選別する差別思想といかに闘うかであり、政府としてその方策を議論する必要があります。そのためにも今回の事件の刑事司法における対応の検証と課題抽出が欠かせないと考えます。

2.本協会は精神科医療や措置入院制度の在り方及び退院後の継続的な支援の在り方を、事件の再発防止策として論ずることに反対いたします。
 被疑者の措置入院歴あるいは精神障害と事件との因果関係が明らかになっていない中で、措置入院制度の見直しを検討することは、あたかも犯罪の再発防止機能を精神医療が担うことを肯定しているかのように写ります。
 精神医療の守備範囲はあくまでも精神疾患のある人への適切な医療の提供であり、その一端である措置入院制度にも、極端な差別思想に基づく行動と人を取り締まる治安機能はありません。
 加えて精神保健福祉士は本人中心の支援を行う立場にあり、社会防衛のために機能することはあり得ません。

3.改めてノーマライゼーションやインクルーシブな社会の実現に向けた取り組みを推進すべきです。
 日本における障害者入所施設の入居者やそのご家族は、本当に幸せなのでしょうか。
 たとえ障害をもって生まれたとしても、地域社会から排除されることなく幸せな人生を送れるような社会作りが必要です。そのためにも財源を伴った社会保障の充実が欠かせないことであり、国として生存権保障を貫く姿勢を今こそ見せるべきです。
 また、改めて福祉専門職や研究・教育者が、差別思想に対峙できる共生思想を再構築し広く啓発することも重要な使命であると考えます。

4.福祉人材の確保と育成方法について見直すべきです。
 今回の事件と障害者施設が置かれている状況や、そこに従事する福祉労働者の実情を切り離して考えることはできません。
 福祉人材を養成する教育現場における人権教育の充実、一定の資質を備えた人材を雇用できるだけの待遇の確保、職場での教育・研修体制の充実が一体的に図られる必要があります。

5.本事件の被疑者をクライエントと捉え、ソーシャルワークを展開するとした場合、その時間と費用の保障が必要であると考えます。
 もし本事件の被疑者に、精神保健福祉士が支援介入するとしたら、長時間をかけて援助関係を形成したうえで、本人の心の闇に入りこみ詳細なアセスメントを行い、本人の不満や不充足感の根源を探り、生き方探しに伴走するようなかかわりが必要となります。
 そのような支援は、例えば短期間に限定される措置入院においては不可能であり、また制度的経済的裏付けなしにはできません。

 措置入院の在り方については、特に措置解除の判断やその後の通院等の強制医療提供の部分に特化して議論を矮小化してはなりません。警察官通報や措置診察件数の都道府県格差をはじめとした措置入院に至る過程の検証も含め、現在設置されている「これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会」で議論すべき事項であり、本協会としてはそちらへ意見提出したいと考えていることを申し添えます。

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標題 精神障害者の成年後見制度利用を促進するために
日付 2016年10月24日
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会
提出先 内閣府 成年後見制度利用促進委員会 第2回利用促進策ワーキング・グループ及び第2回不正防止対策ワーキング・グループ
提出資料
[PDF]254KB
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標題 個人番号(マイナンバー)及び個人番号カード(マイナンバーカード)の取扱いに係る注意喚起
日付 2016年9月27日
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会

 行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(以下「マイナンバー法」という。)及びマイナンバー関連法に基づき、2015年10月から、住民票を有するすべての人に、1人1つのマイナンバー(個人番号)が順次通知され、早1年が経過しようとしています。

 精神保健福祉士が勤務する医療機関、障害者施設、介護施設、児童福祉施設、その他の社会福祉施設等(以下「施設等」という。)に住民票を移している方や、通知カードの送付にあたって施設等を居所として登録した方については、当該施設等に通知カードが届き、その後施設等の利用者が申請した場合に個人番号カード(マイナンバーカード)が交付されます。

 マイナンバーは、主に社会保障・税・災害対策の3分野の法律で定められた事務で使用することになり、精神保健医療福祉の現場においてもマイナンバーに関与する機会が増えています。

 マイナンバー法においては、通常の個人情報より一段高い保護措置を規定しており、個人番号の悪用の危険性に鑑み、個人情報保護法令の特則を定めています。特則として、入手規制・利用規制・提供規制・管理規制・本人からのアクセスの保障などについて詳細な個人番号の取扱い規制がなされています。概要は、必要以上に入手・利用・提供しない、適切に管理するということです。

 私たち精神保健福祉士は、クライエントの社会的復権・権利擁護と福祉のための専門的・社会的活動を行う専門職としての資質の向上に努め、誠実に倫理綱領に基づく責務を担う立場にあります。

 つきましては、厚生労働省医政局等が連名で発出している事務連絡「施設等における特定個人情報の取扱いについて」や政府広報オンラインなどのマイナンバー関連ウェブサイトに掲載されている情報をご参照いただき、その取扱い等について十分に了知し、クライエントに不利益が生じることがないよう、ご注意をお願いいたします。

 なお、本協会では今後、マイナンバー法に基づくガイドライン等の作成を検討してまいります。


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標題 措置入院制度の見直しの動きに関する見解
日付 2016年8月8日
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木一惠

 7月26日に発生した神奈川県相模原市の障害者入所施設「津久井やまゆり園」における殺傷事件(以下「本件」という。)の被疑者に精神保健福祉法第29条に規定されている都道府県知事による入院措置(以下「措置入院」という。)の受療歴があったことは既にマスコミ各社から報道されている。

 本件の犯行当時、被疑者に治療の対象となる精神疾患が生じていたか否かについては、未だ明らかではない。被疑者が障害者を暴力的に社会から排除する思想を持つことと精神疾患との因果関係が十分に検証されていない現段階において、あたかもこの犯罪がその影響であることを肯定するかのように、政府は措置入院制度の見直しを表明している。

 こうした動きに対して、精神障害者の社会的復権、権利擁護を目的として活動する本協会は、精神保健福祉法が本来の趣旨とは異なり、法改正の論点が専ら犯罪予防に偏った方向で進行することに危機感を覚え、見解を表明するものである。

1.政府が表明している措置入院制度の見直しについては、精神科医療が社会防衛装置として機能し得ないことを確認したうえで、精神障害者にとって適切な医療の確保と福祉の増進等を図ることを目的とした精神保健福祉法の趣旨に則り行われるべきである。検討に際しては、自傷他害の要件の厳正化・標準化、治療可能性等の診断基準を明確化し、不適切な医療が行われないよう通報から措置入院に至る流れを再点検する必要がある。現状に鑑みると、措置入院の要件である「自傷他害のおそれ」に対する認識が全国的に標準化されないまま運用されており、大きな自治体間格差が生じている。暮らす地域によって受けられる精神科医療が違うことは、人としての尊厳や権利が侵害される可能性があることを意味する。[※]
 また、心神喪失者等医療観察法と精神保健福祉法上の措置入院の使い分けの曖昧さや、先に改正された医療保護入院制度と比較して手薄な退院支援の仕組みといった課題についても十分に検討する必要がある。併せて、1950年の精神衛生法の立法段階から、精神障害者は危険であるとの意識を市民に植え付けてきた治安的色彩を帯びるこの法規定自体の抜本的な見直しに、今こそ着手すべきである。

2.報道では、措置入院の患者を退院させたこと自体に対する批判のみがクローズアップされている。そもそも、精神保健福祉法の趣旨に沿えば、措置入院患者に対する正確な診断と適切な治療が精神科病院の本来の職務である。安易な措置入院制度の見直しは、精神科病院が新たな犯罪予防及び隔離政策のための施設として位置づけられ兼ねない。司法による犯罪防止活動と精神科医療の役割は全く異質なものであることを強調しておきたい。
 また、本件を契機に、精神障害者が本件と同様な事件を起こす危険性が高いのではないかという偏った認識が国民に助長されることがないように、引き続き、報道各社には適正な報道に努めていただくことをお願いしたい。

 本日、厚生労働省に「相模原市の障害者支援施設における事件の検証及び再発防止策検討チーム」が設置されることとなった。被疑者による明らかな犯行予告を幾度もされたうえで起きたこの事件に関して、行政や警察の判断や動きが適切かつ充分なものであったのか、通報を受けて精神保健福祉法の適用へと判断せざるを得ない行政としての役割限界があったのか否か等々について、早急に検証される必要がある。

 本協会は今後、精神科医療及び保健そして福祉に携わる全ての専門職の方々と議論を重ね、一致団結し、歴史的災いを契機に、日本の精神科医療や福祉の発展に繋がる歩を共にしていきたいと切に望むものである。

[※]例えば、平成26年度衛生行政統計の結果をみると、精神保健福祉法23条通報(警察官通報)を受理した都道府県及び政令指定都市が措置診察にかける割合は1.0%から100%の大きな開きがある。

[PDF版はこちら(162KB)]
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標題 障害者入所施設における殺傷事件に関する見解
日付 2016年7月28日
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木一惠

 このたびの神奈川県相模原市の障害者入所施設「津久井やまゆり園」で発生した事件により、不幸にして亡くなられた方々のご冥福をお祈りしますとともに、ご家族の皆様には衷心からお悔やみ申しあげます。また、負傷された方々の1日も早いご回復を心よりお祈り申しあげます。

 今回の事件が障害者入所施設で発生し、被疑者が当該施設の元職員であったことは、障害者の生活支援を担う私たち精神保健福祉士をはじめとする関係者に計り知れない衝撃を与えました。
 事件は未だ捜査段階にあり、事実関係は明らかではありません。しかし、多数の犠牲者が出た悲惨な事件として社会的な反響が大きく広がっていることに鑑み、本協会は、精神障害者の社会的復権と福祉のための専門的・社会的活動を進める専門職能団体として、現段階での見解を表明いたします。

1.被疑者による行為は、人としての尊厳を著しく踏みにじるものであり、いかなる理由を弄しても断じて許されるものではありません。報道を通して知りうる被疑者の断片的な発言に通底しているのは、障害を併せもつ人々に対する根深い偏見や差別意識であり、憤りを禁じ得ません。さらに、ごく一部とはいえインターネットを介して同様の発信がなされており、社会全体に排除や排他の思想が蔓延していくことを危惧し、深い憂慮の念を抱くものであります。

2.今回の事件報道は、2001年に発生した大阪・池田小学校事件をも想起させます。この事件では、犯人の措置入院を含む精神科治療歴や過去の精神病診断歴がいち早く報道されたものの、後に詐病であったことが明らかとなりました。
 いうまでもなく、措置入院の対象は、医学的正当性のある明確な判断根拠に裏付けられた精神病患者です。しかしながら、今回の事件においては、犯行と精神疾患との因果関係は不明であるにもかかわらず、あたかも精神疾患が事件の原因であるかのような印象を与える報道がなされています。このことは、精神疾患のある人は危険であるとの偏見を煽ることに繋がりかねませんし、精神疾患や障害を抱えている人々が受ける精神的苦痛や打撃の大きさも懸念されます。
 報道関係者には、真実に基づき正確かつ慎重な発信を要望するとともに、全ての国民の皆さまには報道に惑わされることのないよう、冷静な反応を切に願います。

 なお、報道によると、厚生労働省は措置入院の制度や運用について、見直しを検討する方針を示しています。精神保健福祉にかかわる専門職団体として本協会は、措置入院制度の問題に関して改めて見解等を公表することといたします。

[PDF版はこちら(146KB)]
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標題 「ハンセン病を理由とする開廷場所指定に関する調査報告書」(最高裁判所事務総局)に対する意見表明
日付 2016年6月10日
発信者 社会福祉専門職団体協議会
特定非営利活動法人日本ソーシャルワーカー協会 会長 岡本民夫
公益社団法人日本社会福祉士会 会長 鎌倉克英
公益社団法人日本医療社会福祉協会 会長 早坂由美子
公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木一惠

 私たちソーシャルワーカーは、平成28年4月に最高裁判所事務総局が発表した「ハンセン病を理由とする開廷場所指定に関する調査報告書」(以下「報告書」)について、以下の観点から意見を表明します。

 報告書では、ハンセン病を理由とする開廷場所の指定の運用について、遅くとも昭和35年以降は裁判所法69条2項に違反するものであったとし、このような誤った運用が、ハンセン病患者に対する偏見、差別を助長し、ハンセン病患者の人格と尊厳を傷つけたことについて、「深く反省し、お詫び申し上げる。」としており、この点については評価できます。

 しかしながら、「裁判の公開」については、「裁判所法69条2項が想定する公開の要請を満たさないと解される具体的形状を有する場所が開廷場所として選定された事例があったとまで認定するには至らなかった」、と結論づけており、この点については到底容認することができません。

 既に年数が経過しており、「違法」「違憲」と断定することが困難であることは理解できますが、「裁判の公開」を判断するに当たっては、裁判所の掲示場及び開廷場所の正門等において告示を行っていたことが推認されるといった形式的要件ではなく、一般の傍聴が可能であるかという実質的な要件で判断すべきと考えます。

 そもそも、広く一般国民にとって傍聴することが困難な場所である刑事収容施設内及びハンセン病療養所内を開廷場所としていなければ、裁判の公開については問題にならなかったのですから、最高裁判所は「人権の砦」として、年数が経過して証拠が集まらないことをもって自らに有利に解釈するのではなく、問題の本質を捉えて判断すべきであると考えます。

 報告書にあるとおり、司法行政事務に携わる職員は人権に対する鋭敏な意識を持って、このようなことを二度と起こさないよう,具体的な方策を着実に実行していくよう強く望みます。

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標題 国会審議における障害者の発言機会の確保と合理的配慮の徹底を求める声明
日付 2016年5月25日
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木一惠

 公益社団法人日本精神保健福祉士協会は、個人としての尊厳を尊び、人と環境の関係を捉える視点を持ち、共生社会の実現をめざすソーシャルワーク専門職団体である。

 本年5月10日に衆議院厚生労働委員会にて行われた「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律及び児童福祉法の一部を改正する法律案」(以下「法案」という)の審議において、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の障害者が参考人として招致されるも、「意思の疎通に時間がかかる」などを理由に、本人が出席して意見陳述することができなかったことは極めて遺憾である。

 「障害者の権利に関する条約」(以下「障害者権利条約」という。)の批准国として、また、障害者権利条約の作成過程で確認されたスローガン「“Nothing About Us Without Us(私たちのことを、私たち抜きに決めないで)”」を踏まえ、今後の国会審議の場において、二度と障害者が排除されることがないよう、衆議院厚生労働委員会の関係者には猛省を求める。

 特に、本年4月に「障害を理由とした差別の解消の推進に関する法律」(以下「障害者差別解消法」という。)が施行され、障害者差別解消法に基づく「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」(以下「基本方針」という。)では、合理的な配慮の不提供も「差別」として禁止されている。

 基本方針では、合理的な配慮の一例として「意思疎通の配慮・障害の特性に応じた休憩時間の調整などのルール・慣行の柔軟な変更」が示されているが、今回の出来事は、ここで示された合理的な配慮がなされなかったことになり、“障害者差別による出席拒否”であったと言わざるを得ない。

 5月23日の参議院厚生労働委員会では、先のALSの障害者が参考人として出席したが、法案への意見陳述に際して、自身の意思の疎通方法への理解を求めるとともに、国会における障害者の発言機会と合理的配慮を進めることが真の共生社会にむけた契機となること訴えている。

 私たちは、共生社会の実現をめざすソーシャルワーク専門職団体として、国会が障害者権利条約や障害者差別解消法を遵守し、国会審議において障害者の発言機会が確保され、合理的配慮が徹底されることを強く求めるものである。
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標題 熊本県熊本地方を震源とする地震に係る障害者等への支援について(報告)
日付 2016年4月28日
発翰
番号
JAPSW発第16-35号
発信者 公益社団法人日本精神保健福祉士協会 会長 柏木一惠
提出先 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部 部長 藤井康弘 様

 この度の熊本県熊本地方を震源とする地震に関連して、被災地の障害のある方々等への支援に関する諸対策に不眠不休でご尽力をいただいておりますことに、衷心より敬意を表します。

 本協会といたしましても、精神障害者の社会復帰と地域生活支援を担う専門職として、被災された方々への専門的支援に最大限の協力をするべく、4月15日に災害対策本部を設置し、被災地における精神保健福祉に関する情報収集をはじめとして、被災地支援活動への取り組みを進めておりますことをご報告いたします。

 また、被害規模から再建には長い期間を要すことが想定され、被災地の窮状を鑑み、精神保健福祉士による支援活動について、熊本県精神保健福祉士協会の要請に応じて鋭意進めているところでございます。今後、日本精神保健福祉士協会として全国の精神保健福祉士の派遣調整や下記の取り組みを展開する所存です。

 なお、精神保健福祉士の専門的知識や技術を活用し、被災地で活動しているDPAT(災害派遣精神医療チーム)と連携した活動も視野に入れておりますことを申し添えます。

1.被災地において自治体の障害保健福祉部署、精神科医療機関、障害福祉サービス事業所等に従事している精神保健福祉士等の支援者に対する支援(交代要員の派遣)

2.避難所等におけるメンタルヘルスケアチームへの参加

3.避難所等で生活する精神障害者等の生活支援及び環境調整

以上

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